年末商戦に突入し、早くもブルーレイディスク(BD)レコーダーの品切れが家電量販店などで相次いでいる。販売シェアでは現在のところ、HD DVD陣営を圧倒しているBD陣営。一見すればBDの「絶好調」だが、「好調すぎ」による「品切れ」現象で、年末商戦以後のシェアの構図がイマイチ不明瞭になってきている。
「在庫はないんです」「次の入荷はちゃんと決まってない」
次世代DVDレコーダー市場の急成長でシェア争いが過熱してきた
「在庫はないんです」「次の入荷はちゃんと決まってないんで・・・1月中旬から下旬くらいと聞いているんですが・・・」――都内の家電量販店でBDレコーダーの在庫を尋ねたところこんな答えが相次いで返ってきた。今、家電量販店でBDレコーダーの品切れがどうやら相次いでいるようなのだ。
2007年12月14日の日経産業新聞が実施した調査によれば、都内の旗艦店、福岡市の大手家電量販店では、松下電器産業製のBDレコーダーがほぼ「品切れ」状態、ソニー製のBDレコーダーも「品薄」な状態だった(07年12月10日調査)。
家電量販店・ビックカメラのインターネット通販サイト「ビックカメラドットコム」でもソニー・松下製のBDレコーダーの9機種中在庫があるのはわずかに2機種で、いずれも「数量限定」の販売だ。「ヨドバシドットコム」では7機種のうち6機種の在庫がない状態だ。
調査会社BCNの2007年12月5日の発表によれば、07年10月~11月を合算した、次世代DVDレコーダーのメーカ別の販売台数シェアは、ソニー57.1%、松下電器32.3%、シャープ8.7%、東芝2.0%だった。ソニー、松下、シャープのBD陣営と東芝のHD DVD陣営で比較すると「98対2」とBD陣営が圧倒している構図だ。
ソニーは、BDレコーダー4機種を07年11月8日に発売。ハイビジョン録画を強化した機種、高画質・高音質再現を強化した機種など、バリーエーションを増やしたほか、価格も11~18万円程度と10万円台に押さえた。
さらに、松下電器は11月1日に価格は14~27万円前後のBDレコーダー3機種を投入。ともに年末商戦に合わせた新商品投入だが、出遅れたのがシャープと東芝だ。
シャープは2度にわたってBDレコーダー2機種の発売日を延期し、結局発売日は12月22日になった。一方、HD DVD陣営の東芝は12月14日に新商品を発売した。東芝のHD DVDレコーダーの価格は12万円前後だ。
東芝は新製品投入で巻き返し図る
ここまでくると、シャープを除くBD陣営は着実に年末商戦に合わせて商品を投入し、シェア拡大に成功したかに見える。しかし、今後もBD陣営が90%以上のシェアを維持しつづけるのかというと、話は違ってくるようだ。
「BDが底をついて、年末の販売状況は何ともいえなくなってきている」 と指摘するのはBCNの田中繁廣取締役だ。
「まだ東芝の年末商戦モデルが発売されていなかったので(BD98%のシェアは)11月末の構図。東芝の新商品の立ち上がりでシェアは拡大するだろう。しかも、BDは年内に出荷できない状況。BD陣営3社に対し、HD DVDは1社という構図は変わらないが、全体のシェアは動く可能性がある。非常に予測しにくい状況だ」
一方、東芝は
「(HD DVD陣営が)劣勢と指摘されているのは分かっているが、巻き返すためにも新製品投入でシェアの幅を広げたい」(広報担当者)
としている。
家電量販店ではBDレコーダーの多くに品切れの札が貼られるのに対し、HD DVDレコーダーの新製品は在庫がある状態。東芝広報は「BDが売り切れたから、HD DVD買うということになるのか分からないが、HD DVDの機能や信用性で選んでいただければ」と話す。しかし、BDレコーダーを手にできない消費者にHD DVDをアピールする大きなチャンスであることは間違いない。さらに、東芝は08年はじめにもHD DVDレコーダーの新製品2機種を新たに投入する見通しだ。
DVD・HDDレコーダー全体に占める次世代DVDの販売台数シェアは07年11の時点で20%(BCN調べ)。07年9月の時点で1.8%だったことを考えれば、この市場も本格的成長の時期にきている。年末商戦から08年にかけては両陣営にとって正念場だ。