歌うバーチャルアイドル「初音ミク」の「着うた」配信を巡り、ネット上で大混乱が起きている。ドワンゴの子会社が初音ミクをJASRACに「アーティスト」として登録したことがわかり、「著作権が発生して気軽に遊べなくなった」と騒ぎになっている。さらに、ドワンゴが「着うた」で配信販売した、「ミク」が歌う楽曲が、製作者の許可を得ていない、というおまけまでついて、混乱を極めている。
ドワンゴ、ニコニコ動画、JASRACへバッシング
制作者は「ニコニコ動画」で「私の許可を得ずに配信されている」と書いている
自作した曲を歌わせることができるボーカルソフト「初音ミク」を開発したクリプトン・フューチャーメディアの公式ブログに、こんな質問コメントが2007年12月17日に書かれた。
「初音ミクの歌がアーティスト:初音ミクとしてJASRACに登録されたようですが、商用で初音ミクの名前は駄目と以前言われていたかと思うのですがそのあたりどうなんでしょうか」
JASRACの作品データベースで調べると、「アーティスト名 初音ミク」とある。同社の伊藤博之社長が事実を確認、12月19日に「何故JASRACに登録する必要があったんですか?とドワンゴ・ミュージックパブリッシングに抗議をした」と書き込んだ。
「2ちゃんねる」では、JASRACに「ミク」がアーティスト登録されたことに抗議する形で「祭り」が始まった。
「替え歌アップも不可になるのか?初音ミクをブログに貼っている人たちは、どうなるのか?まさかカスラックが金払えと脅されないだろうな」
などというカキコミとともに、ドワンゴ、ニコニコ動画、JASRACへのバッシングが展開された。
この「ミク」のアーティスト問題についてはドワンゴ・ミュージックパブリッシングが07年12月19日、ホームページに経過説明を掲載。クリプトンから「作家名+featuring初音ミク」との表記を行うよう依頼を受けていたが、社内連絡の不徹底からアーティスト名を「初音ミク」として登録申請してしまった、としてお詫びした。
JASRAC広報はJ-CASTニュースの取材に対し、
「ネットで騒ぎになっているのは知っているが、実は簡単な話で、登録名を間違っただけ。修正の依頼が来ていますので、07年12月21日にもアーティスト名は変更されます」
と話した。
しかし、今回のJASRAC騒動から派生して、別の「疑惑」が噴出。簡単な話では済みそうにない様相なのだ。
「着うたは私の許可を得ずに配信されたものです」
ドワンゴは07年11月26日から画像投稿サイト「ニコニコ動画」で人気の、「ミク」の楽曲の販売を「着うた」で開始している。10曲ほどが販売されているが、なんと、製作者の許諾を得てはいないのだという。
「ニコニコ動画」に「ミク」の歌をアップした製作者は、「ニコニコ動画」にある自身のコメント欄に、
「dwango.jpで配信開始された当曲の着うたは私の許可を得ずに配信されたものです。現在はまだ配信契約も締結しておらず、現在は配信停止しています」
などと書いている。
いったい何がどうなっているのか。J-CASTニュースがクリプトンに取材すると、
「当社の何人かが関わっていることでして、現在打ち合わせ中で、今日か、明日にでも経緯の説明を自社サイトで行う予定です」
とだけ話した。ドワンゴに取材すると、JASRACの件はホームページで経過説明したとおり、手違いだったと話したが、「着うた」の配信については、
「うちではなく、クリプトンさんに何かあったと聞いてますが、詳しいことは調査の上で近日中に公表する予定です」
と話している。
「初音ミク」を巡る関係は複雑だが、大雑把に言うとクリプトンがボーカルソフト「初音ミク」を開発し販売。ソフトを買った人が「ミク」の歌で楽曲を制作。その楽曲は主に投稿動画サイト「ニコニコ動画」にアップされ「ミク」の人気が急上昇し社会現象になった、という経緯だ。「ニコニコ動画」はドワンゴの子会社ニワンゴが運営している。