無職女性が大阪市のマンション自室で殺害された事件で、逮捕された容疑者が、犯行動機を「携帯電話のメールを見られ口論になった」と供述していることがわかった。容疑者は被害者の同居人。確かに、家族や親しい間柄の携帯端末の内容を「無断で見た」という例は少なくなさそうだが、発表されたばかりの調査結果によると、実に男性の2割、女性の4割が「無断で恋人のケータイを見たことがある」というのだ。ケータイをのぞいてみたくなる理由とは何なのだろうか。
「のぞき見」したのは男女ともに「受信メール」
「無断で恋人のケータイを見た」ケースは意外に多い
殺人事件が発生したのは、大阪市中央区日本橋のマンションの1室だ。2007年12月18日午前、住人の無職・中尾佳代さん(27)が死亡しているのを、訪ねてきた父親(57)と管理人が発見。首に絞められた跡があったことから、大阪府警は捜査本部を設置し、中尾さんと同居していた男の行方を追っていた。男は同日昼過ぎに愛知県警中署に出頭し犯行を認めたため、捜査本部はこの男を殺人容疑で逮捕した。逮捕されたのは、無職・本藤啓司容疑者(30)。各紙が報じるところによると、本藤容疑者は、調べに対して
「携帯電話のメールを中尾さんに見られたのをきっかけに、女性関係や前妻の悪口を言われ腹が立った」
などと犯行動機を供述しているのだという。
ケータイのメールを見られたことが殺人事件にまで発展するのはきわめて異例だが、ケータイユーザーに対する調査結果を見ると、他人のケータイを「勝手に見た」というケースは、かなりあるようなのだ。
「ネットエイジア」が07年12月3日から5日にかけて、全国のケータイユーザー400人を対象に行った調査によると、
「恋人のケータイの送受信メールや撮影画像、発着信履歴を、本人が不在の状況で、こっそり携帯電話を操作して、無断で見たことがありますか?」
という質問に対して、男性は21%、女性では実に39.8%が「はい」と回答したのだ。何を「のぞき見」たのかについては、男女ともに最も多かったのが「受信メール」で、男性が75.7%で、女性が91.4%。2位は男性が「送信メール」(73%)で、女性が「発信履歴」(81.4%)と、男女で異なる結果となった。
女性で最も多かったのが「隠し事がないかをチェックするため」
さらに興味深いのが、「無断で見た理由」が、男女で違っていることだ。男性は「興味本位で」との理由が最も多く59.5%なのに対し、女性で最も多かったのが「隠し事がないかをチェックするため」で48.6%だ。調査を行った「ネットエイジア」では、
「女性は(男性が)『隠し事をしている』という前提で恋人を見ているようだ」と分析しており、女性が男性をコントロールしようとしている様子が透けて見える。
この傾向は、「恋人に自分にケータイを無断で見られたことがあるか?」という質問への答えにも現れている。女性では「わからない」(42.6%)との回答が最も多かったのに対し、男性から出てきた回答で最も多かったのが「見られたことがある」(32.4%)。実に、およそ3人に1人の男性が「恋人から勝手にケータイを見られている」と認識しているということで、いわば「コントロールされていることを自覚している」と解釈することもできそうだ。
その一方で、「MMD研究所(モバイルマーケティング研究所)」が07年5月18日から21日にかけて4072人を対象に行った調査によると、メールにロックをかけるなどの「セキュリティ機能」を利用しているのは、男性が54.2%、女性が49.8%。さらに、機能を利用していない理由について聞くと、一番多かったのが「設定や解除が面倒」(54.4%)で、「やり方が分からない」(38.4%)が続く。
こう見ていくと、
「メールを見られたくなければ、対策は可能で、本当に見られたくない人は、ある程度は実際に対策している」
というのが実情のようだ。