自民・公明両党による2008年度の与党税制改正大綱が07年12月13日決定し、主要テーマの一つだった証券優遇税制について、2010年12月末までの延長が盛り込まれた。株式譲渡益、配当ともに上限額を設けたほか、株式譲渡損失と配当を相殺して税負担を軽減する損益通算も認めている。民主党が譲渡益の優遇に消極的なうえ、延長を歓迎するかにみえた証券界の不満も根深く、最終決着の動向が今後も注目される。
サブプライムローン問題で優遇延長を求める声広がる
与党税制改正大綱に業界から不満の声も挙がっている
与党大綱の内容は、株式譲渡益は年500万円、配当は同100万円を上限にそれぞれ10%の軽減税率を09年1月から2年間適用するというもの。配当と譲渡損失の損益通算については09年から導入するとしている。
証券優遇税制は03年度に導入され、株式譲渡益と配当の軽減税率をそれぞれ、本則の20%から10%に引き下げた。導入当時は日経平均株価がバブル後の最安値をつけるなど、株式市場が厳しい環境にあり、緊急のてこ入れ策の一環だった。
07年度の与党大綱では、緊急時は過ぎたとして、株式譲渡益は08年末、配当は09年3月末で廃止することを決めたものの、今夏以降、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で再び市場が低迷。このため「優遇税制を打ち切れば株式市場に影響を与える」とし、優遇延長を求める声が自民党内で広がった。今回の与党大綱の決定は、「金持ち優遇だ」と反対する公明党との間の妥協の産物だ。
しかし、「緊急避難的な時期は既に終えている」との指摘は根強く、撤廃を求める声は小さくない。公平性をゆがめてまで株式市場に配慮することには疑問があるのも当然だろう。他方、優遇税制延長に好意的とみられていた証券界にも、失望感の方が大きいのが実情だ。「上限額を設定すれば、投資家はいくらまでなら優遇されるかを計算しながら株を買うことになる。積極的に投資しようという動きにブレーキをかけることになる」というのだ。
政府のあり方が外国人投資家を日本から遠ざけている
ある市場関係者は「政府は『貯蓄から投資へ』とかけ声をかけているのに、投資を促す積極的な対策を取っているとは言えない。そもそも証券優遇を金持ち優遇と発想すること自体がおかしい。そんな政府のあり方が外国人投資家を日本市場から遠ざけていることに気づかないのか」と憤る。反発の矛先は、政府の姿勢そのものだ。
証券優遇税制廃止か撤廃かは議論の分かれるところだが、期間限定のうえ上限額を設定してまで継続、というのはいかにも中途半端だ。ねじれ国会に縛られ、政府・与党が理念を踏まえた方向性を示せない現状を改めて見せ付けるものになった。