地下鉄の車内でケータイで話をしてはいけない。これは半ば「常識」として定着しつつあるようだ。だが、優先席以外でメールを送信したり、ネットサーフィンすることは容認されているケースも多い。利用者側からすれば、駅と駅の間の「圏外」をなくし、出来るだけ便利にケータイを使えるようにして欲しい、というのが正直なところだ。ところが、各携帯電話事業者の取り組みを聞いてみると三者三様で、鉄道事業者側の対応も「車内では電源オフ」含めバラバラなのだ。
ドコモ前向き、ソフトバンクは微妙
地下鉄での「ケータイルール」は都市によって違う
全国の地下鉄の多くが、携帯電話がペースメーカー影響することを懸念する声を踏まえて「優先席では電源を切って欲しいが、それ以外はマナーモードにして通話は控える」というルールを掲げている。地下鉄のみならず、03年9月には首都圏の17鉄道事業者、04年2月には、関西地区の20事業者がこの統一ルールを掲げている。
これらの事業者では、事実上「メールとネットサーフィンは容認」となっており、利用者からすれば、駅の間のトンネル区間で「圏外」になってしまうのは不便だ。
そこで、各社に、今後トンネル内が「圏内」になる可能性があるのか聞いてみた。
まず、NTTドコモからは、
「現在検討中です。やるつもりはあります。関係機関と交渉中です」
と、比較的前向きな回答が帰ってきた。
ソフトバンクモバイルでは
「一概には言えないのですが、お客様の要望を見ながら、継続的な案件として、トンネルを含めて地下での対策について考えています」
と、前向きなのかどうかさえも分からない回答だった。
auは「非常にデリケートな問題」
逆に否定的なのはauブランドのKDDIで、
「非常にデリケートな問題。地下鉄では改札(コンコース)まではサービスエリアとして想定していますが、ホームで使えるということは想定していません。今のところ、トンネル内にアンテナを建てる、といった計画はありません」
と車内でケータイを使う上でのルールとの整合性を気にしている様子だった。また、PHS最大手のウィルコムでは、
「『いつまでに』ということは分かりませんが、検討はしています。(トンネル内での)回線スペースなど、物理的な問題をどう解決するかが、今後の課題です」
と話している。
このように、携帯電話事業者を見てみただけでも、方針はばらばらなのだが、「メールは容認」という鉄道事業者のルールも、決して「全国統一」という訳ではないのだ。例えば札幌、仙台、名古屋の地下鉄では「車内では電源をお切りください」との方針を打ち出している。いわば「メールもNG」とのスタンスだ。また、横浜市営地下鉄では03年12月から、特定の優先席を定めない「全席優先席」を掲げており、やはり「車内では電源オフ」を求めている。
このように、各社がまとまっていない状況なのだが、地下区間でもケータイが通じる路線もある。地下鉄ではないが、学園都市として知られる茨城県つくば市と東京・秋葉原を結ぶ「つくばエクスプレス」だ。05年に開業したばかりの同路線は、都市部では地下トンネル区間が多いが、トンネル内でも携帯電話(PHSをのぞく)が「圏内」なのだ。同路線を運営する「首都圏新都市鉄道」によると、
「トンネル内には、100メートルおきにアンテナを設置してあります」
とのことだ。