「小学5年生の出産」を扱う映画のロケはけしからん――映画の撮影が進行している最中の2007年12月12日、秋田県能代市議会でこんな批判が出た。撮影場所となったのは能代市の小学校の廃校校舎。小学生の性を題材にした映画は「教育上おかしい」と、一部の市民から声が上がっているからなのだという。
親や教師は頼れないと、同級生の協力で出産
マンガ「コドモのコドモ」をめぐって騒動が発生している
問題の映画は、漫画家さそうあきらさん原作の「コドモのコドモ」。内容は、仲の良い小学5年生の幼なじみ2人が、「性交渉」とは知らずにイタズラし、女の子が妊娠。しかし、大人達は妊娠したことを信じない。また、教師も親達も子供の気持ちはそっちのけで、自分の保身ばかり。親や教師は頼れないと、同級生の協力で、出産、育児をする、というストーリーだ。
07年12月13日付け毎日新聞によると、映画のロケが能代市で07年8月25日から行われ、能代市は廃校になった旧渟城第二小の校舎を撮影場所に提供した。地元市民もエキストラとして参加するなど協力体制が取られ、撮影は順調に進んでいたというのだ。しかし、主人公が「小学5年生で出産する」という設定のため、いかに廃校とはいえ小学校校舎を提供するのは「教育上おかしいのではないか」という意見が一部の市民から出て、市議会での議論になったのだという。
同紙によると、07年12月12日に行われた定例市議会で、柳谷渉議員が一般質問に立ち、撮影支援の経緯について説明を求め、
「原作を読んだ限り、命の尊厳について(描かれているとは)感じない」
と発言した、というのだ。これについて、斉藤滋宣市長は、原作を読み、いささか戸惑いを覚えたのは事実、とした上で、
「ショッキングなアプローチであるが、作品の中で子供たちが成長していく過程が教育を考える機会になればと考え、撮影を支援していくことにした」
と述べた。神馬郁朗教育長も市長と同じように戸惑ったが、
「映画に関しては芸術表現の一つ。廃校使用は管理上支障がないものと考え、許可した」
と答弁。しかし、柳谷議員は
「原作に複雑な感情を抱く声があり、ロケ受け入れは見送るべきだった」
と話しているというのだ。
「市民に映画の内容が正しく伝わっていないのではないか」
能代市教育委員会はJ-CASTニュースの取材に対し、市民の間に小学5年生が妊娠するという設定は教育上けしからん、という声があるのは事実、としながら、市民に映画の内容が正しく伝わっていないのではないか、としている。
「ロケ受け入れに際しては、事前に萩生田宏治監督からいろいろと説明を受けました。映画のストーリーは原作とは若干変え、性描写は入らないということです。もともと原作も『性』に特化しているわけではなく、現代社会を描いているわけですから、私達もロケ地を提供することに合意したわけなんです」
しかし、ロケはこの夏から始まっているのに、なぜ年末の今になって一部の市民から苦情が出て、市議会で議論されたのか。同教育委員会は、
「夏から秋にかけては撮影中でしたので、その(撮影で忙しい)時期に話を出すのは悪い、と思ったのではないでしょうか」
と話している。映画「コドモのコドモ」は、08年1月~2月に能代で最終ロケをし、08年中に公開する予定だ。