信販大手の三菱UFJニコスやセントラルファイナンスがクレジットカード業務をテコに、収益拡大を狙っている。信販業界はいま、改正貸金業法や割賦販売法の改正案の影響で、厳しい経営環境にさらされている。信販事業の柱であった「分割払い」の取り扱いが先細りし、柱に育ちかけた消費者ローンも頭打ち。そこで「最後の砦」、クレジットカード事業に活路を見出そうとしている。
いまのカードサービスでは物足りない富裕層にターゲット
セントラルファイナンス(CF)は2007年12月10日から、「CF Card GOLD」の取り扱いを開始した。07年4月に三井住友フィナンシャルグループ入りしたCFの商品化第1弾。三井住友カードやVJAグループの空港ラウンジや人間ドックの優待といった特典に加えて、CFスーパーロードサービスや500万円までのショッピングガード保険、また通常のCFカードに比べて1.3倍のポイントが付くポイントサービスなどが受けられる。
CFはゴールドカードの発行について、「いまのカードサービスでは物足りないなどの、お客の声に応えた」(経営企画部)という。年会費は1万500円。既存のカード保持者からの移行も含め、2010年度末までに10万人の会員獲得をめざす。「若手のビジネスマンや、商品の販売店オーナーなどに持ってもらいたい」と話し、富裕層をターゲットとし、取引の平均単価を上げていく考えだ。
三菱UFJニコスは、英金融大手のHSBCが傘下の香港上海銀行を通じて取り扱う「HSBCプレミア・クレジットカード」の、カードの発券、会員管理、与信管理、売上げ処理の業務を受託した。
HSBCのカード保持者は預かり資産1000万円超の個人富裕層が対象。08年1月から、東京・広尾や赤坂のプレミアセンターで資産運用相談を始める。こちらは年会費無料で、空港のラウンジサービスや300万円までのショッピング保険、ポイントサービスは航空会社のマイレージや全国の百貨店などで使えるクーポン券などと交換できるサービスを提供する。
全国信販協会によると、会員会社44社の2005年度の事業別取扱高は、総合あっせん(クレジットカード)が5兆7744億円(前年同期比1兆2548億円増)、個品あっせん(分割払い)2兆8162億円(同2869億円減)、融資(個人ローン等)4兆1057億円(2824億円増)だった。
「分割払い」の扱いには「温度差」
このときまで順調だった個人ローンは、06年12月の改正貸金業法の成立に伴い貸出金利の引き下げや過払い金返還訴訟が相次ぎ、信販会社の体力を急速に奪っている。
信販会社の足を引っ張るもうひとつの要因が、割賦販売法の改正案だ。リフォームやエステ、健康食品など、通信販売で高齢者や女性に高額商品を売りつける悪質業者と、消費者とのトラブルが続出。商品・サービスの支払いであいだに入った信販会社が、商品の販売会社をしっかり「審査」しなかったと非難された。割賦販売法の改正案では、被害者が信販会社に支払った代金を取り戻すことができるようにし、悪質業者と付き合った信販会社を処分できるようにする可能性がある。
信販各社はすでに業界をあげて加盟店の点検に取り組んでいるが、CFは「業界のガイドラインよりも厳しく(加盟店管理を)行っていて、今後は場合によって加盟店の絞込みもあると思います」(経営企画部)という。しかし、「通販会社など特定商品販売法の業者は、新しい分野でまだ伸びる余地がある」と注目しているし、「分割払いはカード事業のシナジー効果を狙うのに必要」と、収益源であることを強調する。
一方の三菱UFJニコスは軸足をクレジットカード事業に置き、「(分割払いは)ほとんど取り扱っていない」という。分割払いの取り組みは、業界内でも多少の温度差があるようだ。
クレジットカード業務も、銀行系や流通系などが入り乱れ、カード保持者は飽和状態。多様化する「支払い方法」にも対応するため、最近はJR東日本のSuicaなどの電子マネーと組むケースも出てくるなど、こちらの競争も激しい。どこもカード保持者の「囲い込み」に懸命で、利益確保もひと筋縄ではいかないようだ。