池内ひろ美さん「殺害予告」で14日判決 弁護側は「落書き」と無罪主張

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   「氏(し)ね」などと物騒な言葉が日常的に飛び交うネットの世界。そんな中で、評論家の池内ひろ美さん(46)を殺害する予告を書き込んだ会社員男性(45)が逮捕され、2007年12月14日に判決を迎える。検察側は、許容範囲を超えていたとして、厳罰を求めている。書き込みが許されるのはどこまでなのか。

「売り言葉に買い言葉で書いていた」

会社員男性が逮捕後、閉鎖されたままの池内ひろ美さんのブログ
会社員男性が逮捕後、閉鎖されたままの池内ひろ美さんのブログ

   新聞各紙によると、東京都日野市の会社員男性は、脅迫と威力業務妨害の疑いで2007年2月27日、警視庁に逮捕された。池内ひろ美さんがブログで職業差別発言をしたのに謝罪しないなどとして立腹。池内さんが名古屋市内で行う予定だった講演当日の06年12月20日未明、2ちゃんねるに「血で染め上げる」「教室に灯油をぶちまき火をつければあっさり終了」などと書き込み、講演を中止させた疑いだった。投稿者情報のIPアドレスは、2ちゃんねる管理人の西村博之氏が警察の請求で開示した。

   男性はその後、起訴され、検察側は、07年10月5日に開かれた東京地裁での公判で、「陰湿で卑劣な犯行」として懲役1年6月を求刑した。

   これに対し、弁護側は、無罪を主張している。朝日新聞の12月11日付記事によると、その理由は「ネット掲示板の常識を知っていれば脅迫とは読めない」ということだという。

   ここで言う「常識」とは何だろうか。記事によると、被告は法廷で、自らの過激な書き込みに執拗にからむようなほかの2ちゃんねらーに、「いらだっていた」と説明。「血の海になりますよ~」「これは犯罪予告だ!」といった自らの書き込みは、ねらーに向けて書いたに過ぎず、「池内さんに危害を加えるつもりはなく、そういう内容とも思っていなかった」という。被告の弁護人も、「『犯罪予告だ』というのは反語(アイロニー)であるのは明白」「(2ちゃんねるは)通称『便所の落書き』」と説明している。

   被告の男性は、判決を前に朝日の取材にも応じ、犯罪予告などについて、「売り言葉に買い言葉で書いていた」と弁解した。

   話をまとめると、過激な書き込みは、議論を盛り上げるためだけのウソに過ぎないと読むのが「常識」、と言いたいらしい。

ネット実名制の議論が盛り上がる可能性

   一方、検察側は、別の「常識」を主張している。法廷では、「不特定多数が自由に閲覧できる掲示板である以上、書き込みをした人物のみを対象と主張するのは困難」と指摘した。また、匿名掲示板という性格上、「実行する意思があるのか分からず、読んだ者は最悪の事態を想定し、畏怖するのが通常」ともしている。

   お隣の韓国では、検察側が言うような「常識」を重く見て、ネットを実名制にして発言に責任を持たせる制度を07年7月27日から導入している。サイト運営者が住民登録番号を政府のデータベースと照らし合わせる「制限的インターネット本人確認制度」だ。これは、タレント2人がネットの誹謗中傷が原因とみられる自殺をしたことで、「ネット暴力を放置するな」という声が高まったことがきっかけになったという。

   日本でも、香川県坂出市の3人殺人事件で、殺された姉妹の父親がネットで犯人扱いされたり、タレントで弁護士の橋下徹氏が10月15日、2ちゃんねるの殺害予告で刑事告訴したことを明らかにしたり。匿名の書き込みによる被害拡大を指摘する声が、日増しに高まっている。

   そんな中で、韓国のように、ネットに実名制を導入すべきだとの議論が出てきた。例えば、カンニング竹山さんが日本テレビ系で11月2日に放送されたバラエティー番組「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中」で、「インターネット利用者に実名の公表を義務づけます」というマニフェストを提案。その是非を巡る議論が、ネットで盛り上がっている。

   政府も、議論沸騰の中で動き出した。各紙によると、総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が12月6日、2011年施行を目指す情報通信法(仮称)でインターネット上の情報も規制の対象とするよう提言する最終報告書をまとめたのだ。

   裁判官は、14日に予定されている判決で、検察側の「常識」に立つのだろうか。その場合、今後、実名制の是非を含めて、ネットのあり方がさらに広く議論されることになりそうだ。

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