ネット実名制の議論が盛り上がる可能性
一方、検察側は、別の「常識」を主張している。法廷では、「不特定多数が自由に閲覧できる掲示板である以上、書き込みをした人物のみを対象と主張するのは困難」と指摘した。また、匿名掲示板という性格上、「実行する意思があるのか分からず、読んだ者は最悪の事態を想定し、畏怖するのが通常」ともしている。
お隣の韓国では、検察側が言うような「常識」を重く見て、ネットを実名制にして発言に責任を持たせる制度を07年7月27日から導入している。サイト運営者が住民登録番号を政府のデータベースと照らし合わせる「制限的インターネット本人確認制度」だ。これは、タレント2人がネットの誹謗中傷が原因とみられる自殺をしたことで、「ネット暴力を放置するな」という声が高まったことがきっかけになったという。
日本でも、香川県坂出市の3人殺人事件で、殺された姉妹の父親がネットで犯人扱いされたり、タレントで弁護士の橋下徹氏が10月15日、2ちゃんねるの殺害予告で刑事告訴したことを明らかにしたり。匿名の書き込みによる被害拡大を指摘する声が、日増しに高まっている。
そんな中で、韓国のように、ネットに実名制を導入すべきだとの議論が出てきた。例えば、カンニング竹山さんが日本テレビ系で11月2日に放送されたバラエティー番組「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中」で、「インターネット利用者に実名の公表を義務づけます」というマニフェストを提案。その是非を巡る議論が、ネットで盛り上がっている。
政府も、議論沸騰の中で動き出した。各紙によると、総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が12月6日、2011年施行を目指す情報通信法(仮称)でインターネット上の情報も規制の対象とするよう提言する最終報告書をまとめたのだ。
裁判官は、14日に予定されている判決で、検察側の「常識」に立つのだろうか。その場合、今後、実名制の是非を含めて、ネットのあり方がさらに広く議論されることになりそうだ。