マクドナルドで発覚した食品偽装は、本部とは経営が独立のフランチャイズ(FC)店だから起きたとの見方もされた。ところが、このところテレビや週刊誌で直営店での問題が指摘されるようになっている。トップレベルの厳しい食品管理で知られるマックだが、今何が起きているのか。
週刊現代がマックシェイクなどの問題を指摘
直営店での調理問題を報じた12月10日発売の「週刊現代」の記事
マクドナルド直営店での問題を指摘した一例が、「週刊現代」2007年12月10日発売号の記事。「元直営店従業員が『恐怖のカウンター裏』を衝撃の告白 『マクドナルドを食べてはいけない!』」と題して、4ページにわたって東京都内の直営店の元従業員(29)らの証言を紹介している。
この元従業員によると、働いていた店では、マックシェイクで大腸菌などの検査をするとき、試験紙の色が変わることが結構あったが、店長ら上司の判断で客に出すこともあったという。また、小さい茶色のゴキブリが浮いていた油を使って、フライド・ポテトを揚げていたという。元従業員は、店では毎日1回はゴキブリをすくって捨てていたとも証言している。そして、社員から聞いた話として、10人ぐらいの客から腹を壊したとクレームがあったとしている。
さらには、テレビ朝日系で11月27日放送された「報道ステーション」が取り上げた例がある。番組では、マクドナルド直営店の元店長代理という女性が、勤めていた店で売れ残っていたサラダの調理日を改ざんしていた、と証言していた。その後、店を辞めていたのにも関わらず制服を着て出演していたことから古舘伊知郎キャスターが陳謝する事態になったが、テレビ朝日側は、女性の証言そのものは撤回していない。
相次ぐ直営店での問題報道は、事実なのか。日本マクドナルドに対し、J-CASTニュースが確認すると、広報担当者は、「週刊現代の記事の件は、指摘された直営店の従業員関係者からヒアリングをしましたが、そのような事実は確認されていません。もし、20人もの客からクレームが来れば大変なことになります。テレビ朝日の報道は、どこの店か分かりませんので、状況を見させていただいています」と説明した。
コスト削減が背景との報道は否定
FC店での偽装については、背景に日本マクドナルドの原田泳幸社長による急激な改革があると指摘する報道が出ている。
04年2月にアップルコンピュータ日本法人社長から転じた原田社長は、創業者の故藤田田元社長が進めてきた直営店中心の経営からFC店中心の経営にハンドルを切ってきた。そして、FC店を現在の3割から数年後には7割にまで増やす方針さえ明らかにしている。しかし、「週刊東洋経済」12月15日号によると、経営転換は人件費などのコスト削減のためで、それによって、FC店が経営的に苦境に立っているという。原田社長の方針によるクーポン券の乱発や、粗利益でなく売り上げからのロイヤルティ(権利金)徴収、増収策としての24時間営業拡大のためだ。改革の中で、FC店のオーナー約100人がビジネスから撤退した。
新聞各紙でも、偽装のあった東京都内のFC店社員が「コスト面でのプレッシャーを感じていた。(サラダなどを処分するのが)もったいなかった」と話した、と報道している。
一方、日本マクドナルドでは、こうした見方に否定的だ。広報担当者は、「フランチャイズのビジネスモデルに問題があるとは認識していません。コスト削減は否定しませんが、FC店拡大は、改装や投資がやりやすいように規模を大きくするのが主な理由です。FC店全体のキャッシュフローも伸びています。(偽装は)心の問題などがあったと考えており、従業員トレーニングの徹底など一から見直しています」と説明した。
ただ、もし直営店にも偽装があるのだとすると、会社自体の体質に問題があることになる。
日本マクドナルドは、原田社長が就任してから、業績がV字回復。07年11月の売り上げは、前年同月比9.7%増で、なんと22か月連続で前年水準を上回っている。業績拡大のため、無理なコスト削減策に走っていることはないのだろうか。このことについて、同社の広報担当者は、
「全体的な観点から、投資すべきところは投資、無駄を省くところは省くバランスの取れた経営をしているだけです。また、(偽装が)ないように、社内でメッセージを出したり、トレーニングを進めたりしています」
と話している。