携帯電話のゲーム・SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の株価下落が続いている。携帯電話事業者がそろって18歳未満の利用者に、「有害サイト」の閲覧をできなくする「フィルタリング」を設定すると発表したことが影響した。10代に圧倒的な人気を誇っている「モバゲー」だが、強まるフィルタリングの動きのなかで、思わぬ「苦境」に立たされたかたちだ。
親権者が不要としない限り原則フィルタリングを設定
DeNAの株価の下落が続いている
DeNAの株価は、2007年12月11日の東証マザーズのストップ安に続き、12日に東証一部に市場変更したあとも下落が続いた。みずほ証券などがDeNA株を格下げする動きを見せたこともあり、07年12月12日には、午前中に前日比6万6000円安の57万3000円まで下落。この日の終値は前日比3万4000円安の60万5000円だった。株価が下落する背景には何があるのか。
2007年12月10日、総務省の要請を受けて、電気通信事業者協会と、それに加盟しているNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコムは、18歳未満の利用者に対し、親権者が不要としない限り原則フィルタリングを設定すると発表した。これに応じるように、DeNAは2007年12月11日、「モバゲータウン」の「健全性維持に向けた取り組みを大幅強化」を発表している。
「モバゲータウン」は、当初から100人体制で24時間の監視体制を敷いており、誹謗中傷の書き込みやサイト外での出会いを求める行為などを禁止していたが、さらに07年12月20日から、18歳未満のミニメール(「モバゲー」内でのメッセージ)を大幅に制限。「大人」との接触を避けるため、送受信をユーザの年齢前後2歳までのみに制限する。また、08年春までに監視要員を、約300人にまで増員する。
「モバゲータウン」は10代のユーザーが全ユーザーの4割以上を占めており、10代からの圧倒的人気を背景に急速に成長していった。今回の18歳未満ユーザーへの厳しい規制は、「モバゲー」の首を絞めることになりかねない。
DeNA広報はJ-CASTニュースに対し、「(強化策が)業績に与える影響は軽微だと考えている」と話すが、株価への影響を聞いてみると、
「(『モバゲー』の)健全性を維持するということですから、投資家はプラスに捉えるでしょう。(株価下落は)この対策というより、総務省のフィルタリング要請の影響があるのではないか」
と漏らす。
携帯事業者が18歳未満の利用者に対して「有害サイト」の閲覧をできなくするフィルタリングを原則設定することになったが、実は「モバゲータウン」はこのフィルタリングの基準では「有害サイト」に分類されてしまうのだ。携帯電話事業者によって「有害サイト」の分類は異なるが、SNSや掲示板サイトは双方向のコミュニケーションがあるとして、総じて「有害サイト」としてアクセス制限の対象になっている。株価下落の背景には、10代のユーザーの「モバゲータウン」へのアクセスが制限され、同サイトの業績が悪化するのではという懸念がある。フィルタリング強化の動きがDeNAを「苦境」に追いやっているかたちだ。
「健全なサイトも一緒くたになっている」
しかし、現行のフィルタリング原則化への動きには、批判の声もある。
DeNAは「モバゲータウン」の規制強化の発表とともに、
「当社といたしましては、青少年保護の為にフィルタリングサービスを普及促進することには賛成しております。一方で、現行のフィルタリングサービスでは、一律で閲覧制限され、社会的に意義のある健全なサイトなども閲覧不可能になることは問題であり、また一律の制限の仕組みが結果として普及の妨げになっている面もあるように感じております」
と現行のフィルタリング強化の動きに苦言を呈している。
携帯電話業界団体のモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の岸原孝昌事務局長も、「『有害サイト』の定義が曖昧で、健全なサイトも一緒くたになっている」と現行のフィルタリングサービスを批判する。
「『有害サイト』の中身の議論がないままで、『モバゲー』がきちんと管理されたサイトであっても、コミュニケーションや書き込みがあるといっただけで、『学校裏サイト』などと一緒くたに『有害サイト』にされてしまっている。ネット上で意見を言うことさえも『有害』というのは行き過ぎで、未成年者のネットリテラシーが教育できない状況だ。成人になるまで成長させないで、成人になったとたんに『有害サイト』のなかに放り込むことになる」
MCFでは、2008年3月末を目処に、有識者などから構成された第3者機関を設立する予定で、健全な携帯電話サイトを認定するための基準を策定し、政府に現行のフィルタリングサービスを改めるよう求めていく方針だ。