チーズの価格が高騰し、おとなりの韓国では街のピザ店が廃業に追い込まれているという。その原因は、中国やロシアでの大量消費。原料チーズは1年前と比べて約2倍になっており、日本でもピザ店が苦境に追い込まれる日はそう遠くないかもしれない。
07年1月と比べて約2倍という急騰ぶり
韓国ではピザ店の廃業が相次いでいる(朝鮮日報より)
「QBBチーズ」で有名な六甲バターは07年に入り2度値上げを発表している。1回目は7月に「とろけるミックスチーズ」関連の10アイテムを12.3%~15.0%、また業務用チーズの43アイテムについて5.0%~25.9%値上げ。11月発表分は、家庭用プロセスチーズなど7月に値上げした商品を除いた32アイテムを、08年2月1日納品分から20%程度値上げする。
明治乳業は06年3月から、「明治 北海道十勝スライスチーズ」などの市販用プロセスチーズの価格を10%値上げ。雪印乳業も06年2月の出荷分から価格改定しているが、最近の原料チーズの高騰を受けて「改めて検討しているところです」と話す。
値上げの理由は、オセアニア産原料チーズ価格の高騰だ。六甲バターによると、「2003年の輸入価格を100とすると、07年は1.7倍になった」という。これが08年1月~6月分の船積み価格では、07年7~12月分が1トンあたり3700ドルだったのが、同5800ドルとじつに2000ドルも上昇。07年1月と比べて約2倍の急騰だ。
豪州の旱魃に牛の飼料代上昇も響く
では、なぜ原料チーズの価格が高騰しているのか。雪印乳業は「複合的な要因です」と話す。日本のチーズの消費量は年間約27万トンで、このうち国産は約4万トン。残りの約23万トンが輸入だが、そのうちの7割がオセアニアからの輸入だ。原料チーズの価格高騰はオーストラリアで2年続きの旱魃があったことが影響。またバイオエタノールの影響で牛の飼料が高騰していることもある。ちなみに、日本でも酪農家の7割近くが牛の飼料の高騰で赤字経営に陥っているという情報もあって、かなり深刻だ。
さらに、最近の急騰ぶりは中国やロシアの大量消費がある。中国やロシアは欧州からの輸入分も少なくなかったが、チーズなどの乳製品にかかっていたEUの輸出補助金が打ち切りになり、その分が商品価格に上乗せされて高騰したことで、オセアニアからの輸入を増やした。いままで日本に入ってきていたモノが中国やロシアにまわっているようだ。
チーズを大量に使うといえばピザ店だ。2007年12月3日付の朝鮮日報はチーズ価格急騰で、ソウル市内などのピザ店が相次いで倒産していると報じている。チーズ卸業者のアセルフードのオ・ジョンギョン氏のコメントとして「ピザ業界はアジア通貨危機のときより深刻な状況だ」としている。
宅配ピザの「ドミノ・ピザ」を展開するヒガ・インダストリーズによると、「日本ではまだ、それほどの影響はありません」という。
ただ、「ピザ屋さんも最近はオセアニアから直接輸入している場合があるようですから、急騰した分を商品価格に転嫁できなければ、倒産もあるでしょうね」(六甲バター)と、深刻な事態になりつつあることを否定しない。