大阪府知事選の候補者選びが、迷走している。告示まで1か月余りに迫ったのに、お笑い芸人、キャスターなど噂されるタレントらの「名前だけ乱立」状態だ。この中から本命の候補がいるのか、それとも、あの意外な人が急浮上するのか、事態は混沌としている。
読売テレビ解説副委員長の辛坊治郎氏の名前も
著名人の名が挙がる大阪府知事選を特集する新聞各紙
まさにドタバタ劇だった。朝日、毎日、共同の3社が、2007年12月5日付記事で、自民党が弁護士でタレントの橋下徹氏(38)を擁立する方針と報道すると、橋下氏はその日のうちに所属事務所を通じて完全否定してみせた。それも朝毎が「本人は出馬に同意」などと報じたのにもかかわらずだ。
一方、民主党の候補についても、新聞各紙によって、読売テレビ解説副委員長の辛坊治郎氏(51)ら複数の著名人に見方が分かれており、情報が錯綜している。府知事選は、08年1月10日告示、同27日投開票のスケジュール。なのに、出馬予定は未だ、共産党推薦の弁護士、梅田章二氏(57)と無所属の会社役員、羽柴秀吉氏(58)だけ、という異常事態になっている。
しかし、各紙に挙げられた候補者の名前は、豪華だ。お笑い芸人、キャスター、知事経験者…と、著名人がキラ星のごとく並ぶ。スポーツニッポンは12月6日付記事に、その顔ぶれを一覧表の形にして載せた。それを見ると、ジャーナリストの大谷昭宏氏(62)、前鳥取県知事の片山善博氏(56)…、と誰もが聞いたことがあるような8人もが挙がった。
例えば、各紙によると、自民党府議らは、お笑い芸人で前参院議員の西川きよし氏(61)に打診したが、西川氏は11月27日、今後は芸能活動一本に絞るとして、出馬を否定する発表をした。ところが、一部報道では、自民党などが西川氏に再び打診しているというのだ。また、民主党サイドでは、元毎日放送アナウンサーのタレント、近藤光史氏(60)に出馬を打診しているとの報道があった。事実とすれば、07年11月18日の大阪市長選で、近藤氏と毎日放送アナウンサー同期の同党推薦、平松邦夫氏(59)が自民推薦現職を破って当選したことから、2匹目のドジョウを狙う作戦らしい。
ほかにも、タレントから島田紳助(51)、島田洋七(57)、桂三枝(64)3氏が挙がっており、混戦模様だ。ただ、どの人も出馬を否定したり、はっきりしなかったり。まだ名前が挙がるだけに留まっている。
自民、民主は中央・地方で思惑違いが
それにも増して、各党の戦略が不透明だ。
自民党による橋下氏擁立話も、実は、裏事情があるとの見方がある。産経新聞は12月5日付記事で、「橋下氏の名前浮上は、自民の中央政界筋からとみられている。自民党では前々回平成12年の選挙で、党本部が推薦する太田氏と府連が分裂し、別候補を立てた経緯がある。政党関係者は『自民は今回も党本部が主導権を握ろうとし、橋下氏の線をなくすためにリークしたのかもしれない』」と報じた。
また、自民、公明両党には、相乗りを目指す動きがある。朝日新聞の12月2日付記事では、「民主が独自候補擁立を打ち上げ、その候補の要請を受ける形で自公が相乗りする」という戦略を紹介している。「首長選での『原則相乗り禁止』の民主の顔も立ち、対立したくない自公にもメリットがある」という。
一方、民主党にも、府連内に同様な戦略の相乗りを目指す動きがあるものの、小沢一郎代表ら幹部は、相乗りはせず、独自候補を擁立するよう府連に指示したと報道された。各党で中央・地方のねじれがあることも、選挙を分かりにくくしている。
今回の府知事選に対するネットでの反応はどうか。
ミクシィの日記を読むと、タレント候補や相乗りには、嫌悪感を示す意見が多い。例えば、「人気取りじゃなくて実績や政策で勝負しろよ。タレントを隠れ蓑にして操ろうとして甘い汁吸うことばっか考えてるからこんな策しか浮かばないんだよ」「前回の太田房江のような、"自民公相乗り候補者"だけはやめて欲しい」など。
一方、次のように、著名人に期待する声もあった。
「民主党は江本孟紀でも担がへんかなー。(中略)漫画トリオつながりで、ノックと組んでいた上岡龍太郎や、島田紳助タレントでもおもしろい。大阪府知事は官僚じゃなくて、宮崎の東国原知事のようにメディア露出できる人物が適任だと思う。誘客に結び付くような」
1999年の東京都知事選も、キラ星のごとく著名人が目立った選挙戦だった。このときは、現知事の石原慎太郎氏が告示直前に登場して、自民、民主の有力候補を振り切った。名前だけは著名人ぞろいの大阪府知事選でも、こうした「どんでん返し」があり得そう!?