原油高を背景にオイルマネーで潤う中東やばく大な外貨準備高を抱える中国などの政府系ファンド(SWF、ソブリン・ウェルス・ファンド)の動きが金融市場にじわじわと影響を及ぼしてきた。株価低迷から脱しきれない株式市場では、資金流入を招く存在として期待は高まっているが、市場のかく乱要因として警戒感も強まっている。
中国ファンドの投資情報で日経平均大幅高
中東の政府ファンドの影響力が増している
米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題を機に、日経平均株価は11月に入り、終値で1万5000円を割り込むまで下落した。しかし11月最終週の26日には1万5000円を回復した。きっかけの一つは、中国の政府系ファンドが日本株に投資を始める、との報道が伝わったことだ。同日の日経平均は一時、前営業日終値比400円以上の大幅高となった。
奇しくも同じ26日には、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの政府系投資ファンド「ドバイ・インターナショナル・キャピタル」(DIC)が、ソニーに大規模な投資をしたと発表した。ソニー株はその後、大幅に値を上げている。
また、翌27日の日経平均も堅調に推移したが、サブプライム問題への懸念から不透明感が増していた米国景気への悲観論が後退したためだった。そのきっかけは、サブプライム問題の象徴ともいえる米金融大手シティグループが、UAEのアブダビ投資庁から、75億ドル(約8250億円)の出資を受け入れるとの方針を発表したことだった。
東京株式市場では、取引の主要な担い手である外国人の日本株離れが続き、それが株価低迷の大きな要因になっている。このため、中東や中国など政府系ファンドからの資金流入は好材料としてとらえられ、「政府系ファンドの動きが、日本株が底を打つ好機になる」(市場関係者)との声も出ていた。
国際金融市場を混乱させかねないとの不安
オイルマネー自体の取り込みについては、東証が米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)と、イスラム法(シャリア)に対応し、酒やたばこなどの関連銘柄を外した日本株指数「S&P/TOPIX150シャリア指数」を開発して12月から配信するなど、市場の期待は高まっている。
しかし、各国が政府系ファンドを手放しに歓迎しているかといえば、そうでもない。政府系ファンドは今秋の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも初めて議題に上った。世界中に300兆円ともみられる政府系ファンドの動向が、国際金融市場を混乱させかねないとの不安が膨らんだためだ。
実際、27日の東京株式市場では、日経平均終値は続伸したものの、午前中には前日終値比300円超も下落、午後には同500円超も跳ね上がるなど大きく乱高下している。
「オイルマネーがサブプライムへの投資を主導した」(市場関係者)との説もあり、米シティへの出資を苦々しく思う関係者もいる。政府系ファンドに対する市場の期待と不安は交錯している。