豪州新政府が軍派遣検討? 日本調査捕鯨船、本当の危機

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   日本の調査捕鯨に強硬に異議を唱えていた労働党が豪州で政権を取ったが、この新政府の閣議で「日本の調査捕鯨を監視させる軍を出動させることが議題に上る」と豪政府の環境相が述べたと豪大手紙が報じた。こうした「反捕鯨熱」が冷めやらない労働党の姿勢について、日本政府側からは「普通の法治国家としていかがなものか」といった疑問の声が上がっている。

閣議に上げられる議題の最初の1つになる

調査捕鯨のため出港した日新丸
調査捕鯨のため出港した日新丸

   日本の捕鯨調査船・日新丸が07年11月18日に出港し、南極海での調査捕鯨を開始する時期が近づくにつれ、反捕鯨団体の活動も盛んになってきている一方、豪州政府が「反捕鯨」のために軍隊を出動させることを検討する事態にまで発展しているのだ。

   2007年12月2日の豪大手紙シドニー・モーニング・ヘラルド(The Sydney Morning Herald)は、日本の調査捕鯨に軍隊を派遣させる可能性について、「閣議に上げられる議題の最初の1つになる。海軍を使用するのは、日本のクジラ捕殺を止めるために圧力を高めるのが目的だ」と、ギャレット環境相のスポークスマンが述べたと報じた。

   同紙によれば、労働党は法的手続きを経てから、反捕鯨国によって国際捕鯨委員会(IWC)で可決された「南大洋クジラ類サンクチュアリー(保護区)」での日本の捕鯨団に反対するための証拠収集のために海軍か長距離航空機を送り込むと選挙期間中に公約しており、ギャレット環境相スポークスマンの発言もこれを念頭に置いたもののようだ。

   実際、豪州労働党のホームページでは、ギャレット環境相は2007年5月の時点で、「オーストラリアの水域に日本の捕鯨船が入った場合、軍を出動させるか」との質問に対し、

「私たち労働党が言っていることは私たちが、南大洋クジラ類サンクチュアリー(保護区)を監視する役割はますます増しており、常に監視する役割を持つ必要があるということだ」

と「軍の出動」を示唆する発言をしている。ちなみに、ギャレット環境相はロックバンド「ミッドナイト・オイル」のボーカルを担当していた人物で、反核や反米軍基地を主張していたことで知られる。日本の調査捕鯨については、「あらゆる法的手段を取って阻止する」などと発言していた。

「豪政府が主張する『サンクチュアリー』は科学的根拠ない」

   労働党が示唆する軍の派遣は、あくまで「南大洋クジラ類サンクチュアリー」で日本の調査捕鯨船が活動を行った場合の話だ。しかし、水産庁遠洋課によれば、今回の捕鯨船の調査海域と「南大洋クジラ類サンクチュアリー」は「重なる」というのだ。

「豪政府が主張する『南大洋クジラ類サンクチュアリー』は、まったく科学的根拠のないもので、日本政府も異議申し立てしています。IWCでもその妥当性に疑義があるとの見解が示されています」(水産庁遠洋課担当者)

   とはいえ、日本政府・豪州政府が互いに譲らなければ、調査捕鯨船が両国の板ばさみになって動きが取りにくくなることも懸念される。水産庁遠洋課の担当者は、J-CASTニュースに対し「(労働党は)政権を取ってから静かになった印象。やはり、政権与党になれば慎重になるのでしょう」と話しており、今回の「軍出動」報道については、

「今回の調査捕鯨は、豪政府も批准している国際捕鯨取締条約に基づく100%合法的な活動です。理由がなんであるにせよ、軍を出動させるのはいかがなものか。普通の法治国家ならありえないですよね。仮に調査船団に危害を加えるようなことがあれば、シーシェパードやグリンピースと同列です」

と話している。

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