新興企業向け株式市場「ヘラクレス」を運営する大阪証券取引所が、ジャスダック証券取引所を買収する計画を進めている。ジャスダック株の7割超を保有する日本証券業協会からジャスダック株の過半を譲り受け、新興市場部門として傘下に置く計画とされる。しかし、独立を保ちたいジャスダックは「大証からは何も聞いていない」と反発しており、新興企業向け市場の再編の行方は不透明だ。
「自分の力でしっかり強化したい」と反発
ライブドア事件以降、新興市場の低迷がささやかれている(写真はイメージ)
ジャスダックを軸とした新興市場の再編議論は現在、日証協主導で進んでいる。日証協が設置した特別委員会の2007年11月15日の会合では、安東俊夫・日証協会長がジャスダックの今後のあり方について、(1)単独経営を目指す(2)東証に統合させる(3)大証に統合させる(4)東証、大証を含め複数の取引所を統合する――という4案を提示した。
さらに、安東会長は同21日の記者会見で、「東証、大証と調整して、できれば12月20日をめどに結論を出したい」と述べ、年内にも決着させたいとの意向を明らかにした。
こうした動きの中で浮上した大証の買収案は、ジャスダックがヘラクレスを吸収し、売買システムを一本化し、大証がその「新生ジャスダック」を運営するというものだ。統合が実現すれば新生ジャスダックは、上場企業数が約1150社に達し、国内新興市場としては圧倒的な規模になる。
しかし、ジャスダックは不快感を隠さない。筒井高志・ジャスダック社長は26日の会見で、大証による買収計画に対しては、「一切聞いていない」と言い切った。さらに、「自分の力でしっかり強化したい。2年後には上場も検討できる」と述べ、単独での生き残りを強調した。
ライブドア事件以降、新興市場全般が低迷
そもそもジャスダックの再編議論が生じたきっかけは、経営の厳しさ。08年3月期決算で初の最終赤字に転落する見通しで、06年のライブドア事件以降、新興企業のイメージ悪化→投資家離れ加速という新興市場全般が低迷する構図から脱出できていない。ジャスダック、ヘラクレス、東証マザーズの国内主要新興市場の株価指数は、同事件直前のライブドア06年1月の半分~3分の1程度に低迷し、回復の見通しはたっていない。
こうした中、海外ではシンガポールや上海などアジア市場が急成長している。独自色に乏しい複数の市場が乱立している状況では、日本市場の国際的地位の低下は避けられないうえ、共倒れの危険さえある。新興市場の再編は避けられない流れともいえるが、関係者の思惑は交錯しており、明確な方向感が定まらない状況が続きそうだ。