地方債を個人に買ってもらおう 財務情報ネットで積極開示する川崎市

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   地方自治体が、地方債を個人に売り込もうと積極的に取り組み始めている。これまでは市民参加型市場公募地方債(ミニ地方債)の販売に力を入れてきたが、一般の公募地方債をも購入してもらおうという試みだ。自治体の財政不安が広がり、ミニ地方債の売れ残り傾向が強まるなど多くの個人投資家が、地方債は運用商品としての魅力が薄いと感じている。神奈川県川崎市は「(地方債を)もっと身近に感じてもらいたい」(財政局資金課)と、ホームページでの情報開示に力を入れている。

市債の特徴や販売場所の情報を開示

川崎市は、ウェブサイトでの情報開示に力を入れている
川崎市は、ウェブサイトでの情報開示に力を入れている

   日興アイアールが2007年11月26日に発表した「2007年度 全上場企業ホームページ充実度ランキング調査&地方自治体ホームページ調査結果」によると、全都道府県と政令指定都市64団体のなかで、最も「わかりやすく」「使いやすく」「情報の多い」ホームページは神奈川県川崎市だった。自治体をIRの観点から採点した。

   日興アイアールは、「個人投資家の身になって情報を開示している自治体を高く評価しました」と話す。第1位の川崎市は、「川崎市投資家情報」のコーナーを設けて市債の特徴や購入できる金融機関などを紹介しているほか、IR説明会の動画配信なども行っている。

   川崎市は「一般公募債についても個人投資家に買ってもらいたいし、その流れにはあります」(財政局資金課)と話す。たとえば、10月31日に発行した公募5年債(年1.384%)は、発行額100億円のうち、約35.1% を個人投資家が購入した。

   5年債については目標を50%に置いており、「目標には足りなかったが、だいぶ関心が高まっています」と手応えを感じているもよう。地方債の「個人消化」をさらに進めたい考えだ。

売れ残り、情報開示が不十分

   ただ、景気の先行きが不透明なことから資金が国債での運用に傾いているのに、ミニ地方債をはじめとする地方債はさえない。国が元利償還について財源を保障する地方債(一般地方債)は、国債と同じ「安全資産」。基本的にはシンジケート団(シ団)を組んで銀行や証券会社が発行額分を引き受けるので、地方債の多くは機関投資家が保有していて、「売れ残りはありません」(総務省地方債課)という。そもそも地方債は流通している債券が少なく、買い手が少ないので、「売れ残りがない」のは金融機関が在庫を抱え込んでいるだけのことになる。

   ところが、現実に「売れ残りはある」という。個人投資家が購入しやすいミニ地方債についても地元の銀行などが購入者を募集し売れ残った分を銀行が引き受けることになっているが、「昨秋あたりから、銀行が引き受けるケースが出始めた」(地銀関係者)というのだ。前出の川崎市も11月26日にミニ地方債「川崎市民安全安心債」の募集を開始したが、即日完売とはいかなかった。

   その背景には、地方自治体の財務情報の開示が不十分なことがある。夕張市の財政破綻などもあって、自治体財政への目が厳しくなっているのだ。また、調達した資金が地域の学校施設や公園の整備など、資金使途がはっきりしていることがミニ地方債の「売り」でもあったのに、最近はいわゆる「借換債」として募集するケースも出てきて、財政への不安が増している。

   日興アイアールによると、「全体としては発行額の大きい自治体の評価が高い傾向にあるが、上場企業と比べるとIR情報の開示についてはまだまだ」という。

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