東京証券取引所と、米格付け会社でグローバル・インデックスの算出最大手のスタンダード&プアーズ(S&P)は、イスラム投資家向けにビール会社や銀行などを除いた日本株の指数を開発、2007年12月3日から株式指数の算出と配信を始める。この株式指数を活用した上場投資信託(ETF)などの金融商品の開発につなげ、中東のオイルマネーを呼び込み、市場を活性化したい、としている。
イスラム・マネーがどこに投資しているかに注目
イスラム圏の発展に注目が集まっている
東証とS&Pが共同開発した株式指数は「S&P/TOPIX150シャリア指数」といわれるもので、日本株を代表する銘柄で構成される指数の「S&P/TOPIX150」をベースに、金銀取引や利子の受け取り(不労収入)、ポルノ、アルコール、武器などイスラム教の聖典コーランの教えで禁じていることにかかわる企業を除いた79銘柄を採用している。
具体的には、トヨタ自動車やJFEホールディングス、資生堂、大和ハウス工業にヤフーなど。反対に排除されている銘柄としては、ビールなどのアルコール関連や、豚肉を扱う日本ハムや丸大食品、商社や銀行、リース、新日本石油などオイル関係、日本たばこ産業などで、オリエンタルランドのような娯楽関連も不適合。たとえ、優良な銘柄でもダメだ。
S&Pによると、シャリア(イスラム法)指数はクエートのイスラム投資専門コンサルティング会社がイスラム金融に準拠して銘柄の適合性を判断し、指数に対する指示を行うという。
S&Pのインデックス担当は「市場の動きとしては日本株インデックスとだいたい同じ動きになると思います」とし、あくまでもイスラム・マネーを呼び込むための指数であることを強調する。そのことから、日本の個人投資家が「シャリア指数ETF」に投資するインセンティブは大きくないといえるが、「(個人投資家が)参考になるとすれば、イスラム・マネーがどこに投資しているか、その動きから次はどの銘柄が上がるだろうか、考えるヒントにはなりますね」(S&Pの担当者)と話す。
海外では一番成長している分野
さらに、S&Pの担当者は「いま、イスラム金融はすごいんです」という。イスラム・マネーは原油高を背景に存在感を増していて、世界中から注目されている。これまでは「シャリア」に適うイスラム圏内での投資を除き、利子が発生する資産への表立った投資はしづらいと思われていた。
しかし、たとえば最近のドバイの著しい発展にみられるように、イスラムの教えを守った投資であれば、イスラム圏外でも資金流入が期待できると考えるようになった。そこでS&Pは、07年4月からシャリアに準拠した株式指数の開発に着手していたというわけだ。
米国株シャリア指数に欧州株シャリア指数、日本ではあまり知られていないが、「海外では一番成長しているフィールドで、インデックス指数のシャリア化はまだ増えてくるでしょう」とみている。外資系運用会社や証券会社も商品化に力を入れていて、日本でも近く「シャリア指数ETF」が登場する。