情報開示が厳しくなり、そのコストが大変
一般の個人投資家でも購入できるようになったのだから、販売する銀行や証券会社も期待をかけているかというと、どうもそうではないようだ。
債券アナリストの分析はこうだ。「一般的に私大はまだ余裕がありますから、外部から資金を調達することもないです。いざとなれば、私学振興事業団の融資で銀行よりも安い金利で調達できますし、急速に(学校債の)マーケットができあがるとは思えません」と、学校債には否定的だ。
日本私立学校振興・共済事業団もこうした意見にうなずく。設備投資の意欲は減退ぎみで、いまアグレッシブな経営者は少ない。「学校債の利用は本当にわずかです。そもそも経営状況が悪くなりつつあるなかで、資金不足を学校債で埋めていく経営では不安です。1回1回きちんと返済すれば問題ないですが、ローリングする可能性もあって心配です」(私学振興事業団)と、いい顔をしない。
ある私学関係者は、「学校債が使われることはない」という。情報開示が一般の企業並みに厳しくなり、そのコスト負担に耐えられないことが、その理由。学校の会計基準は企業と違うので、それにあわせた書面を作成するだけでひと苦労。学校側は、学校債が自分たちの想像以上に使いづらくなったことで、結局はこれまで通り在校生の保護者や卒業生といった「身内」に頭を下げればいいと感じているようだ。