2007年11月13日の長期金利が一時1.5%を割り込み、1.485%にまで下がった。この水準は日本銀行が量的緩和政策を解除する前の06年1月以来、約1年10か月ぶりの低水準だ。その一方で、東京証券取引所に上場する企業の予想配当利回りが1.53%にまで上昇した。配当利回りは予想配当金を株価で割って計算するので、株価が急落した影響を受けた。しかし、長期金利と配当利回りとの「逆転」は05年7月以来の、これもめずらしい現象だ。この「逆転」現象に、投資家はどのように動けばよいのか。
逆転、即「買い」にはつながらない
投資家はどのように動けばよいのか
長期金利の低下(債券価格の上昇)と株式の配当利回りの「逆転」現象が起こった原因は株価の急落にあるが、そもそもは米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題だ。その影響が世界中の金融市場を混乱に陥れている。
みずほフィナンシャルグループや野村ホールディングスの損失が、合わせて3000億円を超えるなど、金融機関をはじめ日本の企業もその混乱に巻き込まれていて、日本経済にも予想以上にサブプライム問題が影を落としている。
長期金利と株式の予想配当利回りが「逆転」したのは、投資家がよりリスクのある株式よりも安全性の高い国債など債券投資や定期預金に傾いたということ。結果的には株式の供給が抑えられるから「割安」になるし、配当利回りが高くなるということは、株式の魅力が増すことにもなる。
だからといって、それが即座に「買い」にはつながらないようだ。エース証券リサーチ本部の坪内建・執行役員副本部長は「過去にも逆転現象はあって、1年ほど続いたこともありました。このときも株の割安感が指摘されて『買い』と思われたのですが、実際にはそうはなりませんでした。現時点ではあくまで予想配当です。配当の下支え効果はありますが、本決算(08年3月期)が近づいてこないことには判断できないでしょう」と話す。
逆転現象はしばらく続く?
企業の足元の業績は悪くはない。好調な業績を背景に、また投資家への利益還元の一環として、配当金を引き上げる傾向にあるほどだ。サブプライム問題などの理由で株式の「売り」が先行して「計算結果として予想配当利回りが高くなっているにすぎない」(岡三証券のアナリスト・宮本好久氏)という。
長期金利と上場企業の配当利回りとの逆転現象について、宮本氏は「(この状態が)しばらく続く」とみている。株式が割安だといっても、ピンポイントで「底」を予知することは至難のワザなのだ。
ある銀行系証券のエコノミストは長期金利が「1.3%台までは下がる」というし、「日銀は金利の引き上げのタイミングを完全に逸した」とみるエコノミストもいる。株を売って債券に投資する、この「流れ」は当面止められないようだ。