「ひとまず延期」説がささやかれる
地デジが見られる対応テレビの普及も芳しくない。6月末時点で2243万台と日本の全世帯の約3割しか普及していない。今後、月に100万台という現在の増加ペースのまま推移するとしても、2011年の完全移行時点では7~8千万台。目標の1億台には届かない。
問題はまだある。現在の地デジ対応テレビは十数万円とまだ高額。従来のテレビで地デジが見られる外付けチューナーは2万円前後する。総務省は「チューナーは5千円以下にしたい」というが、メーカーは「対応テレビが売れなくなる」と製造には後ろ向き。もっとも、このチューナーで見ると映像も音声もアナログのままだ。
高齢者や低所得者ら「デジタル弱者」の対策も進んでいない。政府部内には「低所得者には地デジ対応テレビ購入の補助をすべき」という声もあるが、財源などのメドはたっていない。日本より早く地上波のデジタル化を決めていた米国や韓国では受信機普及が政府の計画通りにいかないため開始を延期した。
日本では「地デジは国策なので100%普及に向けて全力投球するしかない。延期については誰も触れたがらない」(在京キー局幹部)というように延期はタブーになっている。得をするのは携帯電話事業者だけ。視聴者に負担を強いる地デジの完全移行はひとまず延期、対応テレビが普及した時点で完全移行するのが現実的ではないか。