ここはハイビームにすべきなのだろうか?それともロービーム?――ドライバーなら誰もが夜間の車のヘッドライトを上向き(ハイビーム)にするか下向き(ロービーム)にするかで迷ったことはあるはず。最近では、警察がハイビームでの運転を指導するケースも増えてきているが、その一方で、対向車がいるときはハイビームだとかえって危険、歩行者から「眩しい」と言われる、など困惑の声も上がる。
警察の「ハイビーム指導」は全国的に広がる
夜間走行の「ハイビーム」はなかなか根付きにくい状況だ
2007年11月10日付け毎日新聞によれば、47都道府県警のうち、13県警が「ハイビーム指導」に取り組んでいるという結果が出た。さらに、13県警のほかに、2県警も「将来的に指導する」としており、警察の「ハイビーム指導」は全国的に広がりを見せつつある。
ハイビームを警察が呼びかけるのは、ロービーム走行で事故の危険性が増えるとされているからだ。07年7月からハイビームを指導している青森県警はJ-CASTニュースに対し、「ハイビーム指導」の理由を「(07年)上半期にヘッドライトを下向きで走行し、通行者の発見が遅れて死亡事故につながったケースが多かったから」(交通企画課)と説明。07年5月から「ハイビーム指導」を始めた富山県警も「(因果関係は)断定はできないが、過去5年間の死亡事故でヘッドライトを上向きにしていたケースが少なかった」(交通企画課)と述べる。両県警とも「ハイビーム指導」の広報活動をして、ドライバーに夜間は「基本的にハイビーム」で走行するよう呼びかけている。
各県警などによれば、ロービームの場合、照射できるのは前方約40メートルほどで、ハイビームでは約100メートル照射できる。暗い道の場合、ハイビームで走行していれば前方の歩行者にも速く気づくことができるのは言うまでもない。ただ、ハイビームで走ったら走ったで、弊害がないとは言えないのが難しい点だ。
自動車総合サイトの「オートギャラリー」が07年11月に実施したアンケートでは、「こんなクルマはイヤだ!」のなかで「ハイビームで走っているクルマ」と答えた人が全体の17%にも上った。Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」でも、「通常走行しているときのヘッドライトは、ハイビームかロービームのどっちにすべきなのでしょうか?」という質問が書き込まれ、「通常走行というのは街中など対向車が比較的多い場合はローでないと対向車がとても困ります」「対向車がハイビームできたら自分もハイビームでどれだけ眩しくて迷惑か教えてやります」と答える人もいる。実際に自動車をよく運転するドライバーに聞いてみても、
「後ろの車がハイビームだと光が目に入って周りが見えなくなる」(41歳会社員)
「明るいバルブを使うクルマやHIDライトといった明るいヘッドライトを使っているクルマもあるので、対向車がハイビームだと間違いなく目がくらんでかえって危険」(35歳会社員)
という声が聞かれる。ハイビームだと、前に他のクルマが走行しているときや対向車がある場合は「かえって迷惑」という意見が多い。
道交法では「ハイビームが基本」
日本自動車連盟(JAF)によれば、道交法では「ハイビームが基本」だが、自動車が少ないときに制定された法令であるため、「クルマの多い今の状況では、普段はロービームで、暗くて対向車がない場合はハイビームというが適切になってきている」と指摘する。しかし、ハイビームやロービームの切り替えは「最後はドライバーの判断ということにならざるを得ない」とも述べる。
こうした事情から、「ハイビーム指導」を行っている県警も、ハイビームを全面に強調できない側面もある。
「(ハイビーム指導には)難しい面もある。都会などはクルマが途切れなく走っているからアップライトにするのは難しいということで、どの場所でもハイビームにしてくれという広報はできないんです」(富山県警交通企画課)
「ハイビームは迷惑」という意識が強いドライバーが多く、なかなかロービームに切り替えるという習慣が根付きにくいというのが実情だ。実際、ハイビームで走ったら走ったで、切り替えるのを忘れてハイビームにしたまま街を走行、歩行者から「眩しい」と反発される例も見受けられるという。
「民族性といいましょうか、ほとんどのクルマが下向き」(青森県警)「下向きに慣れて習慣になっている」(富山県警)というように、なかなか「基本はハイビーム」は根付きにくい状況だ。