東京・杉並区では、エサやりルール化
各地では、ノラネコの増加に頭を痛めて、アクションを起こす地域住民も出てきた。例えば、鳥取市の若葉台南町内会では07年9月、鳥取県などと相談してノラネコの捕獲に乗り出そうとした。ところが、この計画書が動物愛護団体に流出し、そのホームページに掲載されると、全国から県にも「捕獲処分に反対します」などと抗議の電話やメールが次々に寄せられた。
県によると、結局、この町内会では9月28日、転居した元飼い主らがエサをやりに来ることを止め、ノラネコの数も減ったとして、捕獲の中止を決めた。元飼い主らは地域猫を実践していたわけではないというが、エサやりに対する住民アレルギーは大きい。
では、地域猫の考え方を導入すれば解決するのか。これに対し、鳥取県生活安全課では、「まだピンと来ない地域の人が多く、そんな中でエサをやれば、ほかのネコが来て食べてしまうこともある。なかなかノラネコがおらんようにはならない」と言う。たとえ誰かが取り組んでも、地域全体の協力がないと難しいようだ。
地域猫の考え方がなかなか浸透しない中で、東京・杉並区では07年10月、独自にエサやりのルールを決めた。エサをやる人には避妊・去勢をしてもらい、エサの残りやフンの始末にも責任を持ってもらう、自称「杉並ルール」だ。ルールが守られない場合は、条例による義務化も検討するという。実現すれば、地域猫が制度化されることになる。
ただ、同区では同時に、ネコに鑑札を付ける登録制を08年度にまず任意登録からスタートさせる考えで、市民団体からは「飼い主がいないネコがいじめられ、捕獲処分される」などと反対が出ている。杉並ルールが地域猫を育てるかどうかは不透明だ。
もっとも、地域猫は、飼い主という責任の所在が明確なものでない以上、依然としてトラブルが残る。猫がどこでフンをするかは分からず、エサをやる人が責任を持つのは事実上不可能だ、という反発は強い。また、ノラネコの場合、人になつかず、そのため避妊・去勢が難しい事実もある。その手術費用2~3万円を賄いきれるのかも問題だ。
北九州市動物管理センターの久保田獣医は、「確かにノラネコは捕まえて殺せばいいという時代ではありませんが、地域猫を育てるためには、地道に話し合って社会的な合意を目指すしかないでしょう」と話している。