国内で販売されている投資信託の中に、米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンに裏付けされた債券が組み入れられている商品があったことがわかった。フィデリティ投信は2007年11月6日、「フィデリティ・世界3資産・ファンド(毎月決算型)」など13の商品にサブプライム関連銘柄を組み入れていることを公表した。サブプライムを組み入れた投信は、野村アセット・マネジメントや大和証券投資信託委託など国内の運用会社などがその存在を否定してきたため、「国内では販売されていない」と思われていた。サブプライム投信はまだあるのか。
組み入れ比率が低ければ、ほとんど影響はない
サブプライムを組み入れた投信は国内でも販売されていた
フィデリティ投信は米国ボストンに本拠を置く、日本国内でも約50本のファンドを運用する有名な運用会社。6日に「サブプライム」を組み入れた投信が13本あることを明らかにしたが、「それぞれのファンドへの組み入れ比率はごくわずかです」とした。たしかに、各投信の組み入れ比率をみると0.002~0.07%と少なく、たとえば約0.07%を組み入れていた「世界3資産ファンド」の基準価格をみると、6日の1万43円が7日には1万111円と前日比で0.67%上がった。「(サブプライムの影響で)ファンド全体の基準価格が大きく動くことはあり得ません。営業担当に聞いたところ(個人投資家からの)問い合わせもないようです」(広報部)と、静かなようすだ。
さらに、同日付の日本経済新聞によると、英国系運用会社のマン・インベストメンツの「IP220インターナショナル償還時元本確保型ファンド2」にも組み込まれているという。
楽天証券経済研究所・客員研究員の山崎元氏は、「たとえば、株式投信でも倒産した企業の株が入っていたからといって大騒ぎすることがあるが、それはバカげたこと。組み入れ比率が数パーセントにもならなければ、ほとんど影響はないし、サブプライムもそれといっしょ」といい、運用に差し支えることはないとの見方だ。また、外資系投信だから組み入れていたとか、国内の運用会社だから組み入れていなかったということもない。
「サブプライムの影響を受けた社債や株式の値下がりのほうが大問題」
つまり、国内の投信運用会社でもサブプライム投信が「ない」と断言できるものではない。ただ、いま言えることは外資系大手の有名な運用会社だからといって、サブプライム問題を事前に完璧に見抜くような情報をもっているわけではなかったということ。山崎氏は「投資家は外資だから、大手だからといったブランド名がある運用会社だから立派で安心なわけではないことを知っていてほしい」と話す。
ちなみに、今回のサブプライム問題のように運用環境が急変した際に、そのときの運用情報を開示する、しないの判断は投信運用会社に任されていて、情報開示や説明の義務はない。ただ、投信会社によっては、投信を販売している銀行や証券会社を通じて、説明用の「レポート」を配布することがある。
とはいえ、国内で販売されている投資信託に、サブプライム問題は「間接的」な影響がみられる。8月以降、すでに金融市場は大混乱して、メリルリンチやシティグループといった世界に名だたる金融機関も大きな損失を被り、国内でも野村ホールディングスが1500億円近い損失を公表している。それもこれも、サブプライム問題をきっかけにした株式相場の急落などが原因だ。
山崎氏は「サブプライム商品に対する直接的な投資よりも、その影響を受けた社債や株式の値下がりのほうが大問題のはずで、ここをうまく調整できるのか、が運用会社にとっては大事になる」とみている。