横田めぐみさんは入っていない?
会場の一部からはどよめきの声もあがり、岸井氏が
「その(生存者の)中に拉致問題のシンボリックな人は入っているのか?」
と、横田めぐみさんを念頭に置いたと見られる質問をすると、田原氏は
「残念ながら入っていない。以前の調査時には8人について調査を行ったが他の人は未調査。8人は死んでいるが、それ以外で生きている人はいる」
と、北朝鮮側が「8人は死亡」との従来の見解を繰り返していることを明らかにした。さらに、
「横田めぐみさんの遺骨鑑定はやり直すべきだ。遺骨DNA鑑定を行った帝京大学の講師は、英Nature誌で『(鑑定結果について)自信はない』と述べている。米国が火葬骨DNA鑑定技術を開発したので米国に依頼してはどうか」
などと持論を述べた。
田原氏と北朝鮮政府高官とのやり取りが仮に事実だとすれば、今後の拉致問題の先行きに大きな影響を与えるものとみられるが、専門家からは懐疑的な声も上がる。コリア・レポートの辺真一編集長は、J-CASTニュースに対して、
「まず、『誰の発言か』が非常に大事。仮に宋大使の発言ということであれば、(拉致被害者の中に生存者がいるという)期待が持てるかもしれない」
と話す。ただし、
「『8人はダメでも、他の可能性がある』という話は、これまでもささやかれていたし、わざわざ平壌まで行かなくても、東京にいる素人でも推測はできること」
と、基本的には「田原情報」には否定的な見解だ。さらにその根拠として、07年10月の南北首脳会談の席で、金正日総書記が「拉致日本人はもういない」と述べ、拉致問題は解決済みとの認識を示した、と伝えられていることを挙げる。
「金正日総書記の発言と矛盾する話で、北朝鮮の高官が、そんなことを言うはずがありません。(発言内容は)田原さんの主観が入っているのではないですか」
もっとも田原氏はシンポジウムの中で、この金正日発言については否定的な見解を示している。
さらに、「北朝鮮ではジャーナリストは信用されていない」として、
「(日本の)外務省にならともかく、北朝鮮高官が、日本のジャーナリストに、そんな大事なことを言うはずがありません。田原さん一流の誇張でしょう」
J-CASTニュースでは田原事務所に対して、「生存説」の発言をした北朝鮮高官は誰か、などについてコメントを求めたが、
「時間が取れないので、今回はコメントできない」
との返答だった。