熟成ワインに比べ品質的に割高なボジョレー・ヌーヴォー。が、毎年のように「今年は当たり年」と言われ、思わず買ってしまう人もいる。ワイン関係者によると、2007年のボジョレーは、天候不順で当たり年とは言えないレベルという。しかも、ユーロ高で軒並み値上げされる見込みだ。値段に見合ったおいしさはないのに、毎年のように日本で盛り上がりを見せるのはなぜだろう。
「ヌーヴォーはジュースみたいなもの」
ボジョレーの解禁を伝えるメルシャンのサイト
フランス産新酒ワインのボジョレー・ヌーヴォーは、毎年11月の第3木曜日に解禁される。2007年は、11月15日だ。すでに、酒造メーカーなどの輸入業者が受注を始めており、ホテルなどでも解禁に向けたカウントダウンパーティーなどを企画している。
ボジョレーは、日本では2500円ぐらいが標準的な価格とされる。が、実はその半分ぐらいが航空運賃なのだ。東京などでワインスクールを運営しているアカデミー・デュ・ヴァン事務局長の立花峰夫さんによると、「蔵出しの状態だともっと安くて、500円までいかない」のだとか。
しかも、ワイン関係者には味の評価は高くない。あるシェフは、自らのブログ「美味しい食材」の11月5日付日記で、「ところでボジョレーヌーボーの解禁がもうすぐですが、(水を差すつもりは、毛頭ありませんが)シェフはお店で提供は致しません ボジョレーはガメ種のフルチィーなブーケが持ち味ですがヌーボーは、単なるジュースだと思っています」として、自宅で楽しむことを勧めている。
また、立花さんも「無理をして作っており、高品質なワインではないことは確かです。あまり難しいことを考えず、コーラやビールのようにがぶがぶ飲むお酒」と話す。やはり、2500円というのは、ご祝儀相場のようだ。
それでも、日本は、世界最大のボジョレー輸入国として、フランスのお得意様だ。なぜ日本人はボジョレー好きなのだろうか。
前出の立花さんは、「難しい質問」としながらも、「お祭り好きな国民性から、クリスマスやバレンタインデーと同じ季節のイベントとして受け入れられたのではないでしょうか。そんな国民性があれば、デパートがバレンタインのブームを作ったように、マーケティングを仕掛けやすい」とみている。
需要減続き、高品質商品で巻き返し
ところが、ボジョレーは最近、一時のブームに陰りが見えている。フランス食品振興会によると、ボジョレーの対日輸出量は2004年の104万ケースをピークに減り続け、06年は95万ケースに落ち込んだ。輸入元の各メーカーは、07年も、需要減を予測して出荷量を前年より減らす計画だ。サントリー、メルシャンは、それぞれ15%、24%出荷を減らすことを明らかにしている。両社とも、その理由について、「前年は店頭に残ってしまった商品も一部にあったため、今年は抑え気味にした」と説明している。
さらに、2007年はちょっとした異変が起きている。まずは、ユーロ高による値上がりだ。輸入最大手のサントリーでは今回、ボジョレーの価格を前年より7~8%アップさせるという。メルシャンも、4%の値上げを予定している。さらに、アカデミー・デュ・ヴァン事務局長の立花さんによると、「今年は、夏場の気温が低かったため、どちらかというと(品質的に)難しい年」とのことだ。
消費者も、割高感や品質を問題にするようになり、もはやボジョレーブームも終わりなのだろうか。これに対し、立花さんはこうみる。
「値段が高くても、いい作り手の付加価値が高いボジョレーなら、飛ぶように売れています。予約販売で品切れの商品もあるようですよ。軽いワインなので、天候で品質が劇的に変わるわけではありません。ユーロ高だからといって、極端に消費量は落ちないでしょう。1、2割のダウンはあっても、必ずしもブームが去ったわけではないと思います」
輸入元各社でも、選ばれた地区のブドウを使って醸造したヴィラージュなど高品質なボジョレーに力を入れている。「高級なボジョレーの需要は、05年から高まっていて、ヴィラージュなどのラインアップを増やしています」とサントリー広報部の担当者。メルシャン広報IR部では、「値が高くても、有機栽培のオーガニック・ヌーヴォーなどを増やしています。いいものはいいと価値が認められています」と話す。
もっとも、品質の高いボジョレーは、航空運賃やユーロ高を加えるとかなり値が張ることになる。熟成されたワインには及ばない中で、どこまで消費者に受け入れられるのだろうか。