セルフサービスのガソリンスタンドで、誤ってガソリンではなく軽油を給油して自動車が動かなくなる、といったトラブルが全国で多発している。原因はセルフのスタンドが急増、自動車の知識の欠けたユーザーが間違って給油したというものだが、背景にはガソリン価格の高騰が関係している。
首都圏の一都三県で4月~6月に153件のトラブル
原油高騰をきっかけにトラブルが増えている(写真はイメージ)
JAF本部はJ-CASTニュースの取材に、首都圏の一都三県で緊急調査したところ、07年4月~6月で153件のトラブルが見つかった、と明かした。07年に入って燃料の入れ違いによる救援依頼が急激に増えたことに疑問を持ち、トラブルのデータを分析したところ、こんな結果が出てきたのだという。トラブルの多くは、セルフ式のガソリンスタンドでガソリン車なのに軽油を入れてしまった、というものだそうだ。これを受けて、JAF愛知支部も東海4県と北陸3県でも調査を実施した結果、07年7月~9月の間に計232件発生していたことがわかった。
間違って軽油を入れた場合どうなるのか。「JAF Mate」07年11月号によると、エンジンの力が無くなり白煙を噴きエンスト。仮にガソリンと軽油を50%ずつ入れると約5キロメートルで走行不能になる。軽油100%では500メートルで止まってしまう。こうなると、整備工場やディーラーで軽油を抜き洗浄しなければならず、部品が壊れるケースもあるのだという。
では、なぜガソリンと軽油を間違ってしまうのか。JAF愛知支部は「ガソリンスタンドの店員や車の知識があるドライバーなら間違うことは通常ありえない」という。さらに、
「ガソリン価格が高騰していますから、できるだけ安いガソリンを買おうとセルフ店に行って、さらに、軽油の方が安いから軽油を入れる、という例があります。また、軽自動車だから軽油、と勘違いするドライバーもいるようです」
と説明した。
ガソリンスタンドセルフ店の拡大はとまらない
また、ガソリンも軽油も値段が高くなり、その結果、ドライバーのトンデモ勘違いが起こる。JAF本部では、
「これまで買っていたガソリンの価格を覚えていて、その値段に近い表示価格のものを入れたら、軽油だった、というものもあります」
といっている。
JAFは「ドライバーに注意を促していく」というのだが、JAF本部も、愛知支部も頭を抱えているのがセルフ店の急拡大だ。セルフ店が無かった時代には、こうした給油トラブルが起こることは殆ど無かったからだ。日本エネルギー経済研究所の調べによると、00年12月末で全国に422店舗だったセルフ店は、01年末は1353店になり、03年末は3423店舗、06年末は6162店舗と倍々で増えている。この理由を同研究所は、
「ガソリンスタンドは過当競争下で価格競争になっていまして、消費者が1円でも安いガソリンが欲しいと奔走している中で、店員がサービスをする店舗は経営が難しくなっているのが現状です」
とし、セルフ店の拡大はこれからも続く状況で、ドライバー一人一人が自分の車の燃料の種類くらいは覚えるよう徹底させるしか対策はないようだ。