「もはやイジメの域に達してるぜ…」
答えにくい父親のことまで詰問され、興毅さんは遠目がちにしばらく沈黙する場面が多かった。代わって、金平会長が「史郎氏は『この会見には出ない。出ない代わりに、私はボクシング界から身を引く。その代わり、興毅と大毅をよろしく頼む』と言われました」と援護。史郎さんが会見に出ないことを執拗に攻め立てるリポーターには、「出ない人間を子どもではないので連れて来られない」と色をなして反論した。
興毅さんもよほど悔しくなったのか、「世間では悪く思われてるけど、俺らの中では世界一のオヤジと思ってるから」と涙声になった。
こうしたリポーターの質問攻撃には、ネットで異論が相次いだ。2ちゃんねるには会見後、「亀田に質問してるレポーターのほうが不愉快」などと糾弾するスレッドがいくつも立った。「鋭く追及してた」などの感想もあったが、
「レポーターは何か勘違いをしてるようだな。 レポーターは罪を認めさせる為の人じゃないし、国民の代表でもない」「もはやイジメの域に達してるぜ…」
など、批判の声が多かった。
リポーターの質問ぶりは、皮肉にもワイドショーの中で話題になった。フジテレビの「とくダネ!」キャスターの小倉智昭さんが、
「警察の事情聴取みたいで、後味がいいものではなかった」
とこぼしたのだ。マスコミ自身によるマスコミ批判とも取れるコメントだった。
数々の批判や苦言に、テレビ局やリポーターはどう答えるのか。テレビ朝日広報部にJ-CASTニュースが取材すると、「この件に限らず、視聴者のご意見やご要望につきましては、真摯に受け止めて、今後の放送に生かしていきたいと思います」。紋切り型の回答が返ってきた。そこで、今度は、リポーターの所属事務所に聞いてみると、慣れない「逆取材」に当惑した様子。取材窓口の担当者は、「申し訳ありませんが、リポーターは地方へ取材に出ていてすぐに質問に答えられません」と恐縮していた。
大の大人が「マルコメ君」のような二十歳の青年を詰問したことは、逆に亀田家に同情を誘うことにもなった。2ちゃんねるでは会見後に、「こうなると亀田にも同情してしまうな」「もう亀田興毅を許してやれよ」といったスレッドが次々に立てられていた。
亀田サイドは、こうした風向きの変化をどう受け止めているのか。
史郎さんが社長を務める「亀田プロモーション」に聞いてみると、マネージャーは、詰問したリポーターに対しては、「皆さんのご意見なので、特別にこちらから言うことは何もありません。質問には、丁寧にお答えさせていただきました」。同情論については、「応援の声があれば、その通りに受け止めます。ありがとうございます、これからもよろしくお願いします、ということです」とあくまでも低姿勢だった。
なお、協栄ジムの金平会長は記者会見で、史郎さんについては、トレーナーからの解雇を考えていたが、本人から辞職の申し出を受けてこれを受理したことを明らかにした。大毅さんは、精神的に追い込まれ家に閉じこもっていることから、面会でき次第、厳重注意することにし、練習再開前に謝罪会見を開かせると言明。また、興毅さんには、今後3か月間、試合の出場を自粛させるとした。