野村ホールディングス(HD)は、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題で、07年7~9月期に約730億円の損失を計上する、と発表した。すでに公表している1~6月期分と合わせると、サブプライム関連の損失は計1456億円に膨らんだ。同社はこれで、同問題での「損失処理はほぼ終えた」とし、米国での住宅ローン担保証券(RMBS)事業から完全撤退すると表明したが、ロシア金融危機での巨額損失の教訓は生かされず、リスク管理の甘さを露呈した。
米従業員をリストラ、社長ら報酬3割を返上
野村の7~9月期の連結決算の税引き前損益は400億~600億円の赤字になる。四半期決算で同社が赤字を計上するのは、株式市場が低迷した03年1~3月期以来だ。また、08年3月までに米国の従業員の3割にあたる約400人を削減するなどのリストラ策も公表、RMBS事業撤退などに伴うリストラ費用は150億円発生するとした。責任を明確化するため、古賀信行社長と副社長2人が08年3月までの役員報酬3割を自主返上することにした。
野村は、サブプライムローンを含む住宅ローン債権を他の金融機関から購入し、有価証券に組み替えた証券化商品を投資家に販売してきた。しかし、サブプライム問題でローン債権の価格が暴落。売却や評価の見直しを進めた結果、損失が大幅に拡大した。住宅ローンの残高は07年3月 末で6578億円だったが、現在は約140億円に縮小、うちサブプライムローンは1億円まで減少したといい、「撤退はほぼ完了した。今後、新たな損失が発生することはない」と強調する。
世界の金融市場で欧米に遅れをとる可能性も
野村は10年前、ロシア金融危機の影響で、米国法人による商業用不動産証券化事業などで巨額の損失を出し、98年9月中間決算では2300億円超の連結赤字に転落した。当時も欧米拠点の人員を大幅削減するなど国内外の大規模なリストラを余儀なくされている。
こうした苦い経験からリスク管理を強化してきたはずが、結果的には教訓は生かされなかった。記者会見した古賀社長は、「想定を超える市場変化に対するリスク管理が不十分だった」と述べ、市場の激変によるリスク回避の難しさを指摘し、弁明に努めた。
国内でサブプライムローンの証券化を手掛けてきたのは野村だけとされ、サブプライムに参入したこと自体、「野村の強さの裏返し」(市場関係者)ともいえる。しかし、今回の巨額損失に伴うリストラで、米国事業の見直しを迫られ、世界の金融市場で欧米の金融機関に遅れをとる可能性も否定できない。