第40回東京モーターショーが2007年10月26日から11月11日までの17日間、千葉市の幕張メッセで開催される。トヨタや日産、ホンダをはじめ、国内外の自動車メーカーや部品メーカー約240社が参加し、520台の車両を展示する。主催の日本自動車工業会によると、そのうちの71台が世界初公開となるという。9月に開かれた欧州最大規模のフランクフルトモーターショーでは、低公害型ディーゼルエンジン車やハイブリッドカー、燃料電池車で環境技術を競ったが、「東京」もそれを踏襲しているようだ。トヨタや日産などはそれらに加えて、若者向けのコンセプトカーを出展し、低迷する国内の販売市場を刺激する。若者向けコンセプトカーやエコカーは、自動車メーカーを救うのだろうか。
「環境」と「若者」がキーワード
日産はユニークな電気自動車「PIVO2」などを出展する
華やかな「東京モーターショー」が10月26日から開幕する。出展される車両をみると、「環境」と「若者」がキーワードのようだ。
トヨタは会社をあげて「環境」に取り組む。ハイブリッドカーの販売は言うに及ばず、たとえば生産工場への部品輸送をとっても、トラック輸送を控えて専用貨物列車「TOYOTA LONG PASS EXPRESS」を増便するなど、環境への配慮を徹底する。ある個人投資家は「トヨタのうまさというか、強さは徹底的にやること」と感心する。
東京モーターショーでは、「レクサス」ハイブリッドを初公開するほか、炭素繊維強化プラスティックを採用した軽量カー「1/X」(エックス分の1)や、健康をテーマにした「RiN」を出展する。
日産は車体が回転し、横にも走るというユニークな電気自動車「PIVO2」や、若者向けの4人乗り小型オープンカー「R.D/B.X」(ランドボックス)を展示。ホンダの「PUYO」はカーブを多用したシリコン素材の外装を採用し、「生き物のような質感をめざした」。同社の「CR-Z」は小型のハイブリッド・スポーツカーと、これもエコ仕様。
マツダのコンセプトカーは「大気」。「空気の流れが目に見えるデザイン」がセールスポイント。ミニバンの「プレマシー」は水素でもガソリンでも走れるハイブリッドカーだ。三菱自動車はコンパクト電気自動車「アイミーブ スポーツ」。クリーンディーゼル・エンジン搭載の「ミツビシ コンセプト‐ZT」を世界で初めて公開する。
原油高に輸送コストの高騰 「逆風」要因ちらほら
ところが、比較的好調だったはずの自動車業界に陰りが出てきたという。日本経済新聞がまとめた主要30業種の産業天気図の07年10-12月期予測によると、自動車は「薄日」から「曇り」にワンランク下がった。7-9月期には、「国内販売の低迷続くが、海外市場は好調」と伝えられていたが、サブプライム・ショックに伴う米国景気の減速懸念から、対米事業に不透明感が漂っていることが理由だという。
ある自動車業界ウオッチャーは、「06年に輸出が伸びたのは、海外で小型車需要が伸びたから。海外の工場が小型車に対応していなかったため、国内から持って行った」と、事情を説明する。海外展開は欧米での伸びは鈍っていて、「成長力が見込めるのはアジアやロシア」と指摘する。
ホンダがハイブリッド「シビック」をインドに投入。08年以降の発売になる見通しだが、「環境」への先進的な取り組みをアピールし、シェアの拡大を狙うといえば、マツダはタイに、フォードと合弁で小型乗用車の工場をつくると発表。スズキはイタリアのフィアット傘下の電装部品メーカー、マネッティ・マレリ・パワートレインと同社のインド子会社、マルチ・スズキ・インディアとの合弁で、インドにディーゼルエンジンの制御ユニット製造会社を設立するという。前出のウオチャー氏は「アジアはこれから本格的なモータリゼーションを迎える。所得が伸びていて、価格は高めだがエコカーが人気だ」という。
現地生産・現地販売へのシフトを加速する自動車大手だが、こぞって出て行けば競争は激化する。海外向けでは海運コストが高騰して、鋼材などの輸入コストや完成車の輸出コストが上昇している。これで円高が進行すれば、為替リスクの影響も見逃せない。なにより、いくら燃費のよい日本車といえども、「原油高がこれ以上進めば逆風に抗しきれない」(大手証券のエコノミスト)と、厳しい目でみている。