2009年末までに上限金利を年29.2%から15~18%に引き下げる貸金業法の規制に、前倒しで対応する消費者金融会社やクレジットカード会社が増えてきた。三菱UFJ系のアコムやモビット、キャッシュワン、三井住友銀行系で三洋信販と経営統合するプロミス、アイフルに武富士、ジェー・シー・ビー(JCB)にオリックスなど、続々と引き下げている。貸出金利の引き下げは、グレーゾーン金利による利息の過払い請求の問題とともに消費者金融の収益を悪化させる要因のひとつではあるが、前倒しの狙いは「新規顧客の獲得」にあるという。
アコムやモビット、アットローン、JCBなどが先行
消費者金融が相次いで金利を引き下げている
貸出金利を年15~18%に引き下げているのは、アコムやモビット、アットローンといったメガバンク系の消費者金融や、クレジットカード大手のJCBなどが先行。これにアイフルや武富士、新生銀行系のシンキなどが追随。「ディック」「ユニマットレディス」のブランドで営業を展開するCFJ(シティグループ)は年12.88~17.88%を打ち出した。
しかし、「レイク」を展開するGEコンシューマー・ファイナンス(年18.0~29.2%)や、プロミスやアイフルなどの大手消費者金融などは既存顧客の上限金利については、従来どおり年25%~29.2%のまま。三井住友系のプロミスは10月から、インターネットや携帯電話での申し込みについて、年17.80%とするサービスを開始。武富士の「ファーストプラン1・2・3」も新規顧客に限り年18%以下の貸出金利を設定したもので、消費者金融業界で「新規顧客」の獲得に狙いを定めた競争が激化しているようすがうかがえる。
ある消費者金融の関係者は「金利を引き下げた効果で、新規顧客は伸びています」と話す。しかも良質な顧客の獲得につながっているという。金利の引き下げとともに広告媒体を工夫したことが奏功しているようだ。
金利下げても、成約率は変わらず
しかし、金利の引き下げ効果が出た消費者金融は多くないようだ。消費者金融大手のアイフルは8月から、新規顧客向けの貸出金利を年18%以下に、また借入金が総額100万円を超す場合は年15%以下とする貸金業法の金利体系に合わせて引き下げた。8月の申し込み件数は2万5976件で、前月比3097件増えた。成約件数でも8月は9440件で、1290件増えた。ただ、成約率をみると6月が36.0%、7月34.5%、8月は35.4%と、大きく伸びたわけではなかった。
あるメガバンク系の消費者金融では、金利を引き下げに伴い審査を厳しくしたところ、成約が減り、その結果審査基準を緩めたという。つまり、金利を引き下げたからといって、お客が増えるわけではないのが現実なのだ。
どの消費者金融も「既存のお客でも審査さえ通れば年18%以下で借りることはできる」というが、新しい基準の金利を適用する際には、これまでの過払い利息を請求されることになる。結局、収益回復は「リスクを回避しながらどうのように貸していくのか」(武富士)という難題をクリアしないことには見込めない。