「虎の子」であるはずの事業も赤字
同書では、同社は、これまでは失敗例も多かったナレッジマネジメントシステムの導入に成功した事例として紹介されている。この成功には、データそのものだけではなく、そのコンテキスト(文脈)を重視、「コンテキストデータベース」として活用したことが成功の鍵だった、などと説明されている。同社は「集合知とコミュニティ、コンテキストデータベース」の関連分野をパッケージ化して営業支援システムとして企業向けに販売、これを担う「DMES(Digital Marketing Engineering Service)」事業は、同社の主力事業となった。また、この延長として、地域コミュニティーサイト「Qlep(キューレップ)」もオープン、全国で展開している。同書では、全国の中小企業がWeb2.0で言う「ロングテール」の世界に進出できるようになるためのQlepの仕掛けなどについても触れられている。
ところが、クインランドIR室によると、同社の「虎の子」であるはずのDMES事業もQlepについても、赤字なのだという。特にDMES事業は2期連続の赤字で、その理由は
「M&Aで事業を拡大し、グループ会社でシナジー効果を得ることに注力していた」(06年6月期)
「事業再編・整理を進めており、主要スタッフをそちらに割かれてしまった。まともな営業ができなかった」(07年6月期)
なのだという。Qlepについては
「ウェブサイトとしての価値は高いが、新しい投資が出来ていなかったため」
と説明、概して2.0とは関係ないところでの不振、と言いたげな様子だった。
なお、佐々木氏の著書では、赤字転落の経緯についても触れてあり、
「この舵取りの失敗はいかにも残念だった。しかし、これまで同社が進めてきたWeb2.0の戦略は、決して間違っていなかったと思われる。その評価は今後、歴史が下すことになるだろう」
と総括している。
もっとも、Web2.0については、2ちゃんねるの管理人「ひろゆき」こと西村博之氏が、07年10月15日に神奈川県藤沢市で行った講演で
「新しい価値が生まれたのかと言えば、別に何も生まれてない気がする」
と発言しているほか、「ビジネス法則の落とし穴」(学研新書)の帯には、「ウェブ2.0なんて妄想だ!」という文字が躍るなど、懐疑的な見方が広まりつつあるのも事実だ。