亀田一家への処分が下った翌朝の朝刊各紙は、この問題を大きく報じた。各紙はいっせいに亀田一家に猛省を求める論陣を張ったが、批判の矛先は、この問題に対して腰が重かった日本ボクシングコミッション(JBC)や、一家を持ち上げてきたメディアにも向いた。朝日、毎日、産経が、独占中継してきたTBSを名指しで非難したのが目を引いた。
大手紙もスポーツ面、社会面で展開し、大きく取り上げる
大手紙の矛先もTBSに向いている
日本ボクシングコミッション(JBC)は2007年10月15日、亀田大毅選手(18)が内藤大助選手(33)とのボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチで、レスリング行為などの反則行為を繰り返したなどとして、同選手に1年間のライセンス停止処分を下した。あわせて、大毅選手に不適切な指示をしたとして、父・史郎氏にセコンドライセンス無期限停止、兄・興毅選手には厳重戒告が下った。
翌10月16日の朝刊各紙は、スポーツ紙のほとんどが1面でこの問題を報じ、大手紙でも朝日新聞が1面で紹介したほか、スポーツ面のみならず社会面でも紙面を展開し、大きく取り上げた。各紙は亀田一家を非難する一方、その原因についても触れており、その責任の一端はメディアにもある、との論調が多いのだ。
一般紙では、朝日、毎日、産経新聞が、亀田戦を独占中継したTBSの責任について、同局を名指しして指摘している。政治関連ではなかなかあり得ない「共同歩調」を取った形だ。
「(JBCは)ジムから離れた自宅での練習を許し、放任だった。また、特にTBSを中心としたメディアも亀田家を持ち上げ増長させた」(朝日新聞、スポーツ面)
「親子を持ち上げ続け、結果的に親子を増長させたTBSの報道姿勢も問われる」(毎日新聞、スポーツ面)
「亀田陣営の試合を独占放送してきたTBSも視聴率重視のあまりタレント扱いし過ぎた点はなかったか。スポーツ放映のあり方にも一石を投じた形だ」(産経新聞、社会面)
読売新聞には、特にメディアやTBSについての言及はなかった。
「我々を含めた一部メディアは見過ごしてきた」
スポーツ新聞は、若干トーンダウン気味だ。
サンケイスポーツは、ストレートニュースとして、15日夜のTBSのニュース番組の様子を紹介。
「同日夕の報道番組『イブニング・ファイブ』は、これまでの同局の放送姿勢を『ざんげ』するような(?)内容となり、内藤をゲストとして呼んだほか、JBCの処分会見をテレビ朝日とともに冒頭から生中継。『ひじでもいいから(相手の)目に入れておけよ』と反則行為を促していた場面も放送した」
と、「これまでのTBSの番組作りはざんげに値する」と言いたげな、遠回しな表現にとどまった。
日刊スポーツは、「記者の目」というコラムで、亀田家について
「『勝つだけなら何をしてもいい』との雰囲気も見え隠れしていた。そんな亀田家の『暴走』を、我々を含めた一部メディアは見過ごしてきた」
と、半ば自己批判を行った。
識者コメントを紹介する形で、メディア批判についても触れる、という紙面構成を取るスポーツ紙もある。サンケイスポーツ、スポーツ報知、そして亀田一家に好意的な報道を続けてきたデイリースポーツが、藤竹暁・学習院大学名誉教授(メディア論)のコメントを掲載していた。各紙とも掲載された文面は同じで、以下の内容だ。
「亀田一家の存在は、その登場からすべてをテレビ局がプロモートしてきた。メディアが人気をあおり、国民もそれに乗ったということを考えれば、次々と消費される芸能界のアイドルと同じ。問題は、こうしたことがスポーツの中で最もストイックとされるボクシングの世界で起きたという点ではないか」
一方で、スポーツニッポンには、特にTBSやスポーツメディアについての言及はなかった。
そんな中、10月16日午後発行の日刊ゲンダイは、終面で
「亀田一家処分で鬼の首取ったようにはしゃぐJBCとスポーツマスコミのアホらしさ」
との見出しを掲げ、スポーツ関連メディアを十把一絡げに切って捨てている。