「ゴキブリ以上の醜態」「品格疑う」――そう批判されて仕方ない試合内容だった。「亀田一家」のマナーの悪さも明るみに出て、放映したTBSにまで「亀田よりの実況・解説はけしからん」「亀田の切腹はどうなったんだ」といった抗議が殺到した。これまで亀田一家を応援していた「朝ズバッ!」も勝者である内藤選手を積極的に取り上げるなど、もはや「見限り」モードだ。
兄が「大毅、ヒジでもいいから目入れろ」
「見苦しい」「まるでプロレス」などの言葉が並ぶ各紙
2007年10月11日、ボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチで内藤大助選手(33)が亀田大毅選手(18)を大差の判定で下した。内藤選手を「ゴキブリ」呼ばわりし、「負けたら切腹する」とまで豪語していた大毅選手だが、最終ラウンドでは相手を投げ飛ばす「レスリング行為」をして減点されるなど、ボクシングとは程遠い試合内容だった。
11ラウンド直前には、兄の興毅選手が「大毅、ヒジでもいいから目入れろ。目もっと行け」と反則を指示する発言がしっかりテレビ中継の音声に拾われており、亀田一家の「リングでの最低マナー」が視聴者にも白日の下に晒された。ただでさえ、実績不明の外国人選手としか戦ったことのない亀田大毅選手。初めての日本人選手に「反則行為」しか繰り出せないことで「亀田一家」のブランドが地に堕ちた瞬間だった。
翌日の新聞各紙でも、
「聖域が汚される。最後はもはやボクシングではなかった」「史郎トレーナーも、大毅も王者・内藤を『ゴキブリ』とののしったが、さらした醜態はそれ以上に、みにくかった」(サンスポ)
「レスリング行為、品格疑う」「リングでの最低なマナーも亀田家のスタイルなのか」(朝日新聞)
などと報じられ、「醜い」18歳ボクサーに「罵声」を浴びせたのは試合会場にいた観客だけにとどまらなかった。
ネット上では大毅選手の敗退が決まると同時に騒然とした状態になり、巨大掲示板「2ちゃんねる」ではスレッドが乱立する「祭り」状態に。「内藤勝って本当に良かった。まだまだ世の中捨てたもんじゃないね」といった内藤選手を賞賛する書き込みが相次いだ。
「朝ズバッ!」も反亀田路線に転換
さらに、誰でも編集が行えるネット上の百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」でも試合直後に「亀田大毅」の項目に「2007年10月11日、切腹を行い死亡した。亀田大毅は内藤大助との試合前、試合に敗れたら切腹を行うと予告していた。この騒動により、介錯を行った父が逮捕された」と付け加えられたほか、「内藤大助」の項目には「2007年10月11日 初防衛戦戦い、WBC世界フライ級14位の亀田大毅に快勝。初防衛。その後、亀田大毅は切腹し、間接的に1亀を抹殺するという国民栄誉賞級の快挙を成し遂げた」という1文が付け加わるなど、ネットユーザーの「反亀田」熱が過剰に盛り上がる瞬間もあった。ちなみに、内藤選手が所属している宮田ジムHPの激励掲示板には、
「国民の期待に応えてくれて本当にありがとうございました!逃げるように帰っていく亀田親子を見て、サイコーに気持ちがよかったです」
といった激励のコメントが試合後から1,000件以上書き込まれている
また、「亀田一家」への怒りの矛先は試合を放映したTBSにも向けられた。同社によれば試合終了後から翌12日の午前9時までに「実況・解説が亀田寄り」「試合前のVTR放送が長い」「切腹はどうなっているんだ」といった抗議などの問い合わせが約1,500件寄せられた。こんな視聴者からの「パンチ」が効いたのか、これまで「亀田一家」を熱烈に応援する放送を繰り返してきた「みのもんたの朝ズバッ!」同日の放送内容もこれまでとはトーンが異なっていた。
番組には内藤選手のみならず、真弓夫人や息子も出演。「8時またぎ」コーナーで「『切腹!切腹!』と罵声の嵐が飛び交いましたよ!」とみの氏が読み上げれば、12Rの反則シーンをまとめたフリップまで作成して言及した。途中、みの氏がチャンピオンベルトを腰に巻いたり、内藤選手の息子にお菓子をプレゼントするなど、完全な「勝者内藤モード」。他局のワイドショーと比べれば「通常」の放送内容だが、同番組で「亀田色」が一掃されたのは意外だ。もしや亀田を見限ったのでは?と思わせられなくもないが、同社広報部はJ-CASTニュースに対し「スポーツ番組の編成については放映権の契約に関するもので広報部では把握していない」と述べている。
06年8月に亀田父・史郎トレーナーとのテレビ番組で舌戦を繰り広げた漫画家・やくみつる氏は07年10月12日のニッカンスポーツに「亀田家は世間を敵に回し負けたうえで、判官びいきの客を呼び込もうという、新たな芸風に転換しようとしているのではないか(中略)ただ反則の横行を見ていると、相撲や他の格闘技行った方がいいと思う」とのコメントを寄せている。「朝ズバッ!」からさえも「亀田色」が一掃された今、「新たな芸風」が受け入れられる可能性は低い。