東京都日野市だけが刑事告発
ところが、この池田市の方針が報じられると、市には電話やメールで「告発すべきだ」「身内に甘い」といった抗議や苦情が、10日までに300件ほども寄せられた。同じく告発見送りを決めた宮城県大崎市にも、これまでに500件ほども同様な電話やメールがあった。
両市は、社保庁の告発方針をどのように考えるのか。池田市人事課の担当者は「まだ分からない状態なので、何とも申し上げられない」と困った様子。しかし、社保庁側に告発見送りを報告した際に、「発覚当時はなぜこうした指導がなかったのか」との異例の文書を添付した。一方、大崎市の柏倉寛総務部長は「組織、権限、人格が違う行政庁がやることなので、なんとも申し上げられない」とコメント。そのうえで、「年金の主管官庁なので、市町村に(告発を)やれではなく、自らの意志でやるのが筋。しかし、当時は、社会保険事務所も処分に納得していた。たまたま大臣が変わったから遡ってやろうというのは、唐突な感じがする」と戸惑いも見せた。
とすると、唯一、告発した東京都日野市は、なぜ方針転換したのか。同市では、女性職員が2000年に国民年金保険料14万7100円を含む公金を着服・横領し、その後、懲戒免職となっている。同市職員課の人事係は、J-CASTニュースに対し、「当時は、最大限の処分であり、社会的な制裁も受けているということで告発しない判断をした。しかし、今回は、上級官庁の社会保険庁、総務省から通知があり、社会問題にもなっていることから、より厳しい対応をしないといけないと考えた。当時の判断が甘かったという認識ではない」と話している。他の市町が告発を見送ったことについては、「よそのことをこちらでコメントする立場ではない」としている。
舛添厚労相に批判的な首長が多い中で、東京都の石原慎太郎知事(75)は、その意向に理解を示している。が、この人事係は「都からは通知を受けていない。あくまでも市としての判断」だと説明する。市には、「よくやった」という電話やメールが20件ほど寄せられているという。
もっとも、各市では、横領を証明する書類がすでに破棄され、当時の警察が事件を知りながら告発を指示しなかったなどの事情もある。だが、社保庁サービス推進課では、「社会的な制裁を受けているかどうかなどは、司法できちっと判断すること。お金を返せばいいというものでもない」とあくまで強気の姿勢だ。