シティが日興子会社化 「三角合併」への経済界の抵抗感薄れた?

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   米金融大手シティグループは、日興コーディアルグループの株式を「三角合併」方式で取得し、2008年1月にも日興を完全子会社にすると発表した。三角合併は07年5月に解禁されたが、実際に活用されるのは初のケース。今後のM&A(企業の合併・買収)で利用が進む可能性もある。

国内経済界の反発で1年間凍結されていた。

米シティは日興を完全子会社化する
米シティは日興を完全子会社化する

   三角合併は、外国企業が日本に設立した子会社を通して、日本企業を買収する手法。海外から日本への投資を促進する目的で、06年5月施行の会社法に盛り込まれたが、国内経済界の反発が強く、1年間凍結されていた。具体的には、外国企業が自社の株式を対価として、買収したい日本企業の株主に割り当て、外国企業が作った日本国内の子会社にその日本企業を吸収合併させる。

   シティは07年春、日興に対してTOB(株式の公開買い付け)を実施、現在、シティの日本法人、シティグループ・ジャパン・ホールディングス(CJH)が日興株の約68%(議決権ベース)を保有している。シティは今回、残る約32%の日興株取得を目指し、日興の株主に日興株と交換で自社の株式を割り当て、日興をCJHの完全子会社にする計画だ。

   交換比率は今後詰めるが、日興株式1株に対し、1,700円に相当するシティ株を割り当てる予定。1,700円は過去の株価などから算定した価格にプレミアムを加えたもので、今春、日興に対して実施したTOB価格と同額。

   三角合併方式による株式交換が完了した場合、日興は上場廃止になるが、シティは現在、東京証券取引所に上場申請しており、年内にも上場が認められる見通しだ。このため、日興の株主はシティとの株式交換に応じても、引き続き東証でシティ株を売買できる見込みで、「株主にはかなり配慮している」(市場関係者)との見方も少なくない。

TOBより迅速に子会社化できる

   シティがあえて日興の子会社化に三角合併を用いたのは、「TOBより迅速に子会社化できる」(CJHのダグラス・ピーターソンCEO=最高経 営責任者)との狙いが大きいとされる。さらに、株式交換を行えば、現金を使わないですむメリットもある。シティは、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に端を発した市場環境の悪化などから、07年第3四半期の純利益が前年同期比で約60%の大幅減になるとの見通しを発表したばかりで、シティの台所事情が背景にあるとの見方もある。

   一方、国内の三角合併の第1号が、シティによる日興子会社化になることで、「経済界を中心に広がっていた三角合併への抵抗感はかなり薄れたのではないか」(市場関係者)との声も出ている。今後、日本企業が絡む国境を越えたM&Aが増加するのは必至とみられており、日興の事例をM&A関係者は「テストケース」として注視している。

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