「時間がなかったし、初めてのことでしたので…」
では、静銀はなにをそんなに急いだのだろう。同行は「回収を焦ったわけではないのですが、とにかく初めてのことですし、時間がありませんでした」という。融資管理部によると、クレディアと交わした融資契約にある「債権譲渡担保契約」を行使するためには、クレディアが倒産手続きに入る前に利用者に「債権譲渡通知」を送付する必要があった。9月14日に倒産したクレディアの手続き開始決定日は同21日で、実質3日しかなかったこと。加えて、送付先が約6000と通常では考えられない多さだったこともあって、「連休(9月15~17日)返上で作業して、ようやく間に合わせました」と説明する。
通常の売掛債権の債権譲渡であれば、事業者同士のやり取りで済むので送付先も数十件程度だし、文書が何を意味するかもわかっている。今回は送付相手が「個人」であったにもかかわらず、企業への対応と同じように「機械的」に処理したことがアダになったわけだ。
ある地銀の幹部は、「一般的に、企業が倒産して取りはぐれれば責任問題。他行が動く前に、というのは定石どおり。コンプライアンス・チェックもして法に則って動いたのだろうが、人間の感情がどういうものかを忘れていた。ある意味、仕事に忠実で生真面目な銀行マンが陥りそうな話だ」と分析してみせた。
「静銀は敷居が高いですからね。消費者金融でお金を借りる人がどういう人なのか、もう少し考えたほうがよかったのではないでしょうか」(古橋氏)