1人は無期、2人は死刑の可能性
被害者が1人でも、死刑判決が言い渡される例はあるのだろうか。
メディアでの事件解説で知られる白鴎大学の土本武司法科大学院長は、J-CASTニュースの取材に対し、それを肯定した。
「かつては、『結果の重大性、特に被害者の数』と言及した最高裁判決があったため、下級審の裁判官に誤解が生まれていたようです。しかし、最近は、情状を総合的に考慮して、被害者1人でも死刑判決が下されるようになってきています。オウム真理教の事件があってから、重い刑が増える傾向にありますね」
それでは陳情が量刑に影響することはあるのか。これに対し、土本氏は、
「国民は司法の素人ですが、裁判では、国民感情が凝縮されて、量刑が言い渡される慣行になっています。国民感情から離れた刑は、長続きせず、上級審で覆される可能性があります」
と指摘する。さらに、10万人という署名の数について、土本氏は「聞いたことがありませんね」といい、その数の力については、「効果があるでしょうね」と話した。
もっとも、情状が認められるケースもある。例えば、犯人が自首したケースだ。利恵さん殺害事件の場合は、川岸容疑者が「死刑が怖かった」と自首し、共犯者の存在も明らかにしていた。土本氏は、
「日本の司法は、犯行後の情状に重きを置く慣行があります。そのうえ、死刑判決に慎重です。この事件の場合、(川岸容疑者は)無期懲役でしょう。残りの2人は死刑になると思います」
と見通しを述べた。
10万人という署名の数は、多くの人が見るネットの威力だろう。遺族が願うように、すべての容疑者に必ずしも死刑判決が出るとは限らないようだが、ネットで示し合わせた稚拙な犯罪は、皮肉にも、ネットからしっぺ返しを食らう形になった。