店舗の商品を万引きした犯人が、捕まえられた店員に暴行を受けて死亡する事例が相次いでいる。商品を盗まれた方としては「犯人」を捕まえたいのは当然の心理。しかし、どういった訳だか捕まえる際に暴行して「犯人」を死亡させてしまい、結局は店員の方が逮捕されてしまう皮肉なケースが続いている。背景にあるのは何なのか?
126円の菓子パンを万引きして、暴行される
万引きした男性を蹴って死亡させたとして、埼玉県警などは2007年10月3日、傷害致死容疑でコンビニ店経営の新井忠義容疑者(37)を逮捕した。各紙の報道によれば、新井容疑者は9月29日午前1時35分ごろ、川越市南台の市道上で無職の男性(51)を足で蹴る暴行を加え、同日の8時半頃に腰椎骨折などによる後腹膜出血で死亡させた疑い。
この男性は126円の菓子パンを万引きしたのを新井容疑者に発見され逃走。新井容疑者は、警察に連れて行こうとしたが、男性が寝そべるなどして抵抗したため暴行したという。
このコンビニ店フランチャイザー企業は「なぜこのようになったのか分からない。残念な気持ちだ」とJ-CASTニュースの取材に対して答えており、想定外の出来事に困惑した様子だ。しかし、このほかにも店員や店長が万引き犯を死亡させてしまう「想定外」のケースが最近だけでも相次いでいる。
07年9月には、船橋市本町のスーパーで万引きした男性に暴行を加えて死亡させたとして、スーパーの店長(40)が傷害致死罪で逮捕・起訴された。店長は9月4日夜に缶ビールを万引きした男性(56)を店の資材置き場に連れて行き、殴る蹴るなどの暴行を加え店近くの路上に放置し死なせた。万引きした男性は過去にも2回このスーパーで万引きしており、店長は「懲らしめてやろうと思った」などと供述していたという。
07年9月11日には墨田区のカードショップで漫画本1冊を万引きしようとした男性(29)が店員に取り押さえられ意識不明になる事件が発生。店員2名が翌日に傷害容疑で逮捕された。万引きした男性は漫画本1冊を万引きしようとしたところを店員に捕まえられ、殴りかかるなど暴れたため、押し倒して首を絞められた。男性は1週間後に死亡。警視庁は傷害致死の疑いもあるとして捜査していた。
万引きが「近年増えたということはない」
なぜ、店員が万引き犯を死亡させるケースが相次ぐのか。考えられるのは万引きの増加だが、2007年上半期の万引きなどの窃盗犯は前年同期比で5.7%減と、増えるどころか減っているのだ。各コンビニチェーンに聞いても、
「全くないわけではないが、多発しているという話は聞いていない」(セブン&アイHD)
「近年増えたということはない」(ローソン)
「増えたという報告は受けていない」(am/pmジャパン)
と、やはり万引きの数が最近で急激に増えたから、こういった事件が相次いでいるとは考えにくい状況だ。
しかしながら、万引き犯が捕まえた店員に暴行を加えるケースも多く報道されており、こうした万引き犯の「抵抗」が、店員の過剰なまでの「怒り」の引き金を引いてしまった可能性もありそうだ。