「コロコロ変えると、裁判官に信用されなくなる」
この方針変更が報道されると、ブログや2ちゃんねるでは、弁護側への批判が相次いだ。
確かに、低速、ブレーキなし、などだけでは、なぜ居眠り運転だったのか分かりにくい。危険運転致死傷という重い刑を避けるための詭弁だったのかどうか。弁護側に取材できないため、J-CASTニュースでは、刑事裁判に詳しい識者に話を聞いてみた。
テレビ番組のコメンテーターで元検事の大澤孝征弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、弁護側にある程度の理解を示した。
「光市の母子殺害のケースは、弁護側が被告を誘導したとしか思えません。あれは例外です。今回のひき逃げ事件の場合は、証拠があり、被告が同意しているなら、弁護の方針として仕方がありません。被告を守るために、弁護士はあらゆる主張をする義務があるからです」
ただ、方針変更の内容については、疑問を示した。
「後ろから車をぶつけたのは、加害者の問題です。被害者にも責任があるという論法は、被害感情に悪影響を及ぼし、量刑にも響きますので、私はいい結果になるとは思いません。不合理な主張をする場合もそうです」
刑法に詳しい日大大学院法務研究科の板倉宏教授は、J-CASTニュースに対し、次のように答えた。
「弁護側は、居眠りをしていたと指摘することで、被告が危険運転致死傷罪に当たらないことを主張しているのだと思います。方針転換は、珍しいことではありません。普通の人から見ると妥当とは思えないでしょうが、弁護側がそういう主張をしただけでは不当だとは言えません。光市のケースは、妥当性を欠いており、事実を曲げるような主張はいけない。とはいえ、今回のひき逃げ裁判でも、あまり主張をコロコロ変えるようでは、裁判官に信用されなくなるでしょう」
ちなみに、このひき逃げ事件では、11月6日の論告求刑、20日の最終弁論を経て、判決が言い渡される。裁判官は、どのように弁護側の方針転換を判断するのだろうか。