女性用シャンプー・リンスをめぐるシェア争いが激しくなってきた。資生堂など国内外の大手メーカーが相次いで新製品を投入する秋の商戦が本格化している。20~30代の女性の7割がカラーリングで染め(花王調べ)、パーマや仕事のストレス、紫外線で髪が傷んでいることから、新製品はその修復効果を最大のセールスポイントにしている。550ml入りの「ポンプタイプ」で800円以上する「プレミアム市場」を主戦場にしたシャンプー戦争。秋の陣の勝者はどこ?
ツバキで再びブランドシェア1位を目指す
「ゴールデンリペア(白ツバキ)」の売れ行きは「好調」だそうだ
資生堂は2007年9月18日、昨年3月に発売してヒット商品となった赤いボトルの「ツバキ」の第2弾として、白いボトル入りの「ゴールデンリペア(白ツバキ)」のCM発表会を東京の表参道ヒルズで開いた。CM出演する蒼井優、仲間由紀恵、広末涼子、竹内結子、観月ありさ、鈴木京香さんら女優6人が勢揃いし、商品を手にキャッチコーピーの「日本の女性は美しい」をPR。新製品は既に店頭に並んでおり、「好調な売れ行き」(ドラッグチェーン大手)と上々のスタートを切った。
白ツバキは、傷んだ髪を補修するアミノ酸誘導体やプロティンからなる「ツバキアミノ」が入っており、艶やかな髪に、とPRした「赤ツバキ」より2割高い900円台で販売している。商品棚を赤と白のボトルで占拠しようという戦略で、両ツバキで年間220億円の売り上げを目指している。
ツバキの宣伝で資生堂は06年、50億円という異例の広告宣伝費をかけた。増えすぎた化粧品ブランドを整理し、強いブランドをつくる「メガブランド」戦略を、シャンプーなどのヘアケア分野にも導入。トップ女優6人が競演する派手な宣伝効果もあり、06年度は4300万本を出荷し、目標だった100億円の1.8倍の180億円を売り上げた。ブランド別シェアで、ツバキは念願の1位を獲得し、メーカー別シェアでも万年4位から、昨年8月まで1位を維持する原動力となった。
白ツバキも、有名女優6人をそろえるCMスタイルは踏襲した。「高価格帯のシャンプー市場をつくったのは資生堂。ツバキで再びブランドシェア1位を目指す」という。今回の宣伝費用は明らかにしていないが、「市場動向を見ながら同様なインパクトを目指す」と説明しており、相当額であることには違いなさそうだ。
資生堂の発表より一足先の9月1日に新商品「h&s」を発売して先陣を切っていたのは、プロクター&ギャンブル・ジャパン(P&G、神戸市)だ。同社5つめのヘアケアブランドで、「美しい髪は健やかな地肌から」と、髪の毛のケアに加えて、地肌をケアする機能を強化する亜鉛化合物のアクアミネラルを配合した。「地肌のケアは面倒で、中年男性がするもの」というイメージの覆しを狙っており、大手新聞に見開き広告を展開するなど、販売促進費には「過去日本でかけたことのない規模」を投入する。流通サイドには「80億円をかける」と説明したとされる。CMタレントは女優の山口智子さん。
ヘアケアトップのユニリーバは資生堂に対抗心むき出しにする
一方、ヘアケア分野でトップを自認するユニリーバ・ジャパン(東京都目黒区)は、「資生堂のツバキの挑戦を受けましたが、年間では06年もラックスが首位で、99年から続いている。今年の1~6月の半年間も首位です」と、対抗心をむき出しにする。髪の補修機能を強化し、保湿効果成分の「ヒアルロン酸EX」を配合したラックスの新シリーズ「スーパーリッチシャイン」シリーズを、資生堂の白ツバキCM発表会と同じ18日に発売した。25日には、東京・丸の内で、CMソングを歌う伊藤由奈さんのミニライブを開き、丸の内の女性たちにアピールした。CMにはハリウッド女優のレイチェル・ワイズさんが人魚姿で登場する。
ラックスは、従来から髪の補修機能の高さを訴求してきたシャンプーで、消費者への浸透度も高く、資生堂も一目置いている。ブランド別シェアでトップのラックスを抜くことが各社の至上命題であり、資生堂は赤ツバキで一時達成した。その後ラックスが再逆転して首位をキープしている。
各社のこうした動きに最も神経を尖らせているのが花王だ。主力のアジエンスを初めて全面刷新して10月13日に発売する。髪の毛の表面を保護している「MEA(メチルエイコサン酸)」という天然成分の脂質を羊の毛から抽出し、髪に強固に定着させる技術を新開発した。洗髪後に髪の毛本来のなめらかな質感が得られるという。
花王のアジエンスは2003年10月の発売で、欧米の有名人モデルを多用した外資系メーカーに対抗して「アジアンビューティー」を提案。高価格帯のシャンプー市場に国産メーカーとして挑戦し、市場活性化の引き金を引いた。今回もアジアの黒髪を強くアピールするため、女優の後藤久美子さんと、チョン・ジヒョンさんの2人を起用する。
国内ヘアケア市場は3,000億円規模で、米国に次ぐ巨大市場とされる。ただ販売数量は多いものの、ドラッグストアで値引き競争にさらされ、売り上げが伸びない成熟市場とみられていた。しかし、高価格帯の市場活性化で「数パーセント伸びた」(ユニリーバ)。シャンプーの定番商品は600円台だが、高価格帯商品は800円前後と高く、安売りしなくても売れると販売店も歓迎なのだ。かつては家庭に1本あればよかったシャンプーが、「私のシャンプー」と1人1本へと変化している。
メーカー別のシェア争いは激烈を極めており、市場調査会社の調べでは、花王が昨年9月から首位となり07年7月では25%前後を占める。以下、ユニリーバ20%、資生堂が17%、P&Gは14%前後の順だ。ただブランド別シェアは毎週順位が替わる戦国時代。新製品が出ると、一度はお試しで買ってみる女性たちが少なからずいるだけに、彼女たちがリピーターとなってくれるかどうかが、カギを握っている。