「紹介相手がサクラだった」――結婚相談・情報サービス業への苦情内容をまとめた調査報告書を経済産業省が発表した。「サクラを見破る方法」がたくさんネット上で紹介されている出会い系サイトほどではないが、「結婚相談所にサクラはいるのか」という不安はネット上で垣間見ることができる。出会い系「並」の業者もいるのだろうか。
「顔を出すだけで良いと頼まれた」女性も
結婚相談・情報サービスの会員は60万人に上るとみられる。
経産省が報告書を発表したのは2007年9月21日。国民生活センターへ寄せられたのは05年春から06年11月までの苦情・相談4,600件だった。うち、出会い系業者が結婚相談を「偽装」している場合などを除く「結婚相談・情報サービス業者」への苦情3,409件を分析した。
「紹介相手がサクラである・パーティー等参加者が変わらない」の項目に分類されたのは、76件(他項目と重複あり)で3,400件中の2.2%だった。もっとも報告書が取り上げている分類項目ごとの苦情・相談の具体例をながめると、ほかの分類項目「希望相手から断られる」(5%)や「悪質だと感じる」(11.1%)の中でも「サクラ疑惑」を主張したそうな不満が並んでいる。分類の線引きはなかなか難しそうで、「サクラ」問題の項目と重複計算されていない可能性もある。
分類項目「紹介相手がサクラ~」の苦情具体例は、次のようなものだ。「数回紹介してもらったが、いずれも顔を出すだけで良いと頼まれたと言い、結婚の意志のない人ばかりだった」「解約を申し出た後で急に3人の女性から連絡が入り(略)2人とは会ったが進展はしなかった。解約させないためのサクラだったのではないか」。
ほかの分類項目にあった具体例の中でも「サクラ疑惑」を指摘する内容がある。「何人か紹介されたが、電話で話すのは駄目でメールでやりとりすることになる。(略)メール段階で断られることが続き、メールは本当に会員が出しているのか疑わしく思う」「2回メールが来て終わった。納得できない。こうした被害にあっている人が沢山いる」。もっとも、報告書に載っている苦情例は一部を除き、「相手がサクラだったから」断られたのか「本人にも問題があったから」なのかは分からないものもある。
「サクラ体験談」はネット上にもある。Q&Aサイト「OkWave」(07年春)には、結婚相談所への入会を検討している男性が知人から「女性はサクラばかり」と言われた、として実態を質問した。自身が相談所へ入会していたことがあるという女性の回答によると、お見合いパーティーの参加途中、「サクラの女性」が回答者のことをサクラと勘違いして話しかけ「誰(スタッフ)に頼まれて来たんですか?タダで御飯も食べられるからって頼まれて来たんですけど・・もう早く帰りたーい」と言ったと報告した。もっともこの回答者は「ともかくは入会してみて会ってみない事には分からないかと思います」と入会を勧めている。別の女性の回答では、入会してパーティーに参加したが、男性から「あなたはサクラですか」と質問されたことがあったことを報告、入会を肯定的に評価していた。
出会い系も「結婚紹介」に進出?
一方で、サイトで結婚・見合い関係のサービスに登録したものの、「出会い系と何ら変わらない」という報告もある。高額のメール返信代を請求されるなどの被害があるという。経産省が報告書の中で詳しい分析から除外した「成婚を目的としていない事業者(いわゆる出会い系サイト)」に寄せられた苦情・相談は485件あった。結婚相談なのか出会い系なのか「紛らわしい」サイトが増えているということだ。
出会い系の「サクラ」対策のサイトは盛況だ。自身を「サクラ経験者」と名乗るものも多数登場し、「サクラっぽいメール文案集」や「危険なサイト一覧」などのページで「注意」を呼びかけている。お見合いパーティーのサクラと違う点は、女性のふりをする男性が男性向けにメールを送るアルバイトが報告されていることだ。もっとも多くのサイトで、注意点を挙げたり気を付けた方がいいサイトの名前を挙げたりしながら、「次のサイトは安心です」とやはり出会い系サイトを紹介するものが多い。しかし、実際は「安心」できないサイトもあり、これでだまされる客が多い、というのは常識だそうだ。
経産省の報告書を業界関係者はどう受け止めているのか。経産省などによると、業者数は4,000近くで7割は個人経営と見られる。業界団体として同省が唯一把握しているという「結婚情報サービス協議会」(東京都)にJ-CASTニュースが取材した。同協議会は複数の大手業者を含む5社で構成している。一部の業者に対する「サクラの苦情・相談」が報告されていることについて協議会担当者は、業界には多くの会社がある中、一部の例が結婚相談・情報業界全体の話と受け止められるとすれば「つらいし不愉快だ」と述べた。仮にサクラを利用したとすれば、信用問題に関わり発覚すれば「(会社が)潰れますよ」とし、「(サクラ利用は)考えられない」と強く否定した。協議会以外の業者はどうかと質問すると、「分からない。うわさレベルの話はできないし」と歯切れは悪かった。
しかし、サクラ以外にも苦情があることについては「少子化に歯止めをかけるためにも、結婚紹介の事業は社会的使命がある」とも述べ、契約の際の解約条件の説明を従来の文書だけでなく図も使って分かりやすいものにするよう準備を進めているという。
経産省は、報告書をもとに07年度中にトラブル防止の指針をまとめる。さらに業界側に対し、指針を基に優良業者の認定証を出す制度を自主的に作るよう促す方針だ。