海運業が絶好調だ。海運大手の一角である川崎汽船は2007年1月24日に1株あたり1,041円と、1,000円台に乗せて以降株価が右肩上がりで上昇している。米国のサブプライムショックで、一時的に8月17日には1,292円に下げたが、その後も高騰し9月28日は1,687円(前日比マイナス6円)と395円上げた。商船三井は8月17日の1,450円から同1861円(前日比プラス2円)と411円上昇。日本郵船も8月17日は1,000円を割り977円だったが、翌18日には1,000円台に戻し、9月28日は1,122円(前日比マイナス12円)だった。
「中国」特需で運賃値上げ交渉も強気
海運株が右肩上がりで上昇している
商船三井系のバラ積み船に強い第一中央汽船は9月28日に1,119円を付けた。前日比11円高だが、サブプライムショックで株式相場が崩れた8月17日の699円からは実に420円も上げた。9月20日に08年3月期の連結業績見通しを上方修正したことに加えて、バラ積み(原材料の輸送)船の運賃が高値圏で推移していることが好調の要因。1989年12月に付けた上場来の最高値1,390円も見えて来ようかという勢いだ。
JASDAQに上場する新和内航海運も好調。同社は国内海運が専門。9月28日は647円で前日比マイナス18円だったが、主力の荷主である新日鉄との長期契約で安定的な業績が見込める。このように、海運業界はいまや大手ばかりでなく、業界をあげての好調ぶりだ。
好調の要因は「中国」。鉄鉱石や石炭、穀物などの輸入が増えたこと、また中国から欧州などへの製品輸出が活発なことが、いまの海運業を支えている。川崎汽船は10月から、アジア-欧州間のコンテナ船運賃を値上げする。「欧州は好景気で荷動きが活発な状況が続いています。荷を積む船のスペースは不足しています」(川崎汽船IR室)と話し、荷主への交渉も強気で臨んでいる。
海運業の平均運賃を指数化したBDI(バルチック海運指数=1985年平均を1,000とする)は9,000ポイント(9月27日時点)を超えて、過去最高値を連日更新している。この指数、年初は6,000台に乗ったところだったが、4月に7,000台、5月には8,000台に乗せた。「バルク船(原材料の運搬船)、なかでも中国向けの需要が大きい」(川崎汽船)ことから、バルク船が牽引し、コンテナ船が連れて回復した格好。こうした運賃の引き上げ効果もあって、株価高騰につながった。
生産と消費の「分業」は世界的な潮流
海運株へのマイナス要因をあげるとすれば、円高と原油高。円高は115円を想定している会社が多く、現状のまま推移すれば、さほどの影響はない。原油高も「いまの水準であれば想定内の範囲」(川崎汽船)だが、いま以上に上昇することになれば株価の「下げ」要因になるとみている。
しかし、岡三証券企業調査部の宮本好久氏は「それもあまり心配しなくていい」という。 「海運株は、市況の影響を大きく受けます。為替、原油に市況までが悪化するとよくないですが、いまは市況が落ち込む要因がなさそう。円高や原油高の影響を市況が吸収してしまいます。中国やインド、東南アジアの生産国と、その完成品を買う欧州などの消費国の分業体制が世界的な潮流になるなかで、短期的な調整はあるでしょうが、海運株はまだ好調が続くと考えています」