京都府京田辺市で16歳の二女が警官である父の首を斧(おの)で切りつけ殺害した事件が発生したことを受け、アニメ番組が相次いで打ち切りや休止を余儀なくされている。事件に類似するシーンがあるというのが自粛の主な理由のようだが、一方で「過剰すぎる放送自粛は"偏見"を助長するだけ」といった指摘も出てきている。
「アニメ自体ではなく、社会的な影響を考えた」
KBS京都は「映像表現を修正」して放送を再開する
京都府京田辺市で二女が2007年9月18日未明に京都府警交通課巡査部長の父親の首などを刃渡り約11センチの斧で数回にわたって切り付け、殺害した事件を受け、アニメ番組を放送するテレビ局が、放送を休止するなどの措置を取り始めた。
テレビ神奈川は事件が発生した9月18日、同日放送予定のアニメ番組「School Days(スクールデイズ)」の放送を急きょ休止した。
テレビ神奈川広報はJ-CASTニュースに対し、放送中止の理由について、
「18日に起こった少女が父を斧で殺害した事件に類似するシーンがあった。アニメ自体に問題があるというわけではなく、社会的な影響を考えた」
と説明する。同番組の最終回の放送が中止となったことから、同局には約200件の問い合わせが寄せられた。同局は今後の放送についても「未定」としている。
KBS京都は9月21日、同日放送予定のアニメ番組「ひぐらしのなく頃に解」の放送を休止した。同局は同日夕方に、
「事件と番組の関連があるかどうかは不明ですが、少女が凶器を持っている場面などがあり、地元京都の事件であることなどから、番組を不快に思われる視聴者の方がおられる可能性があることを考慮して判断させていただきました」
とするコメントを発表。翌週の9月26日には、「映像表現を修正」して9月28日から放送を再開すると発表している。
東海テレビも9月20日の「ひぐらしのなく頃に解」の放送休止を決定し、翌週の9月27日の放送も休止することになった。
飛ばした分を今後放送するのかで苦慮
同局広報宣伝部は同番組の放送を休止した理由について次のように説明する。
「社会的にもショッキングな事件で、その日の分の放送でそれを連想させるであろうシーンがあったため休止を判断した。事件関係者もふくめて、不快に思われる視聴者の方がおられるのではないかということで、視聴者の気持ちを慮った」
9月20日放送分に事件を連想させる恐れのある殺害シーンがあったことから、9月27日にその分を放送するのはタイミング的に適切でないと判断。とはいえ、ストーリー的に連続性があることから20日分を飛ばして次回分から放送するわけにも行かず、「(どういうかたちで今後放送するのか)判断が至ってない」(広報宣伝部担当者)と苦慮しているようだ。
一方、「School Days」の放送を休止した神奈川テレビは「ひぐらしのなく頃に解」の放送については、「(番組の)プレビューの段階で放送内容に問題が無いと判断した」として、通常通りの放送をしており、今後の放送についても現段階では継続する方針だ。
アニメ番組の自粛について、2007年9月26日付読売新聞(夕刊)のコラムは次のように批判する。
「被害者や遺族への配慮というより、『触らぬ神にたたりなし』的な事なかれ主義が"過剰反応"の連鎖を招いているようで残念です。今回の事件でも、『アニメやゲームの影響?』という決まり文句が繰り返されるのには、うんざりします。過剰すぎる放送自粛は、そうした"偏見"を助長するだけだと思うのですが」