グッドウィル訴訟、原告の数は増えていく
――グッドウィルの訴訟についてですが、原告はもっと増えていくのでしょうか。
原告が26人というのは、実は私たちの予想よりすごく少ないです。当初は、100人ぐらいの規模になるだろうと考えていました。「データ装備費」が何回引かれたかが全部書かれている「支払い確定内訳一覧表」というデータがあって、訴訟に最低限必要な資料として開示請求しましたが、グッドウィル側がわざと出さなかったのです。これから、代理人を立ててきちんと開示請求していきます。個人情報ですから、グッドウィルは当然開示に応じなければいけません。これによって、多くの人が訴訟に踏み切れることになります。26人で賠償額は450万円ですから、100人規模になれば2000万円規模になる可能性が高い。なんとか取り戻したいという人は山ほどいますから、当然、原告の数は増えていくでしょう。
――フルキャストは返還に応じる一方で、グッドウィルは全額返還に応じない。なぜだと思いますか。
返すという判断の方がどう考えても賢明ですよね。不当な天引きが違法であることが社会的に認知されているわけでから。放置するということになれば、社会の非難を浴びる。そう考えた時、フルキャストとしては、確かに返還するのは支出という面では痛いけど、返さないで社会の非難を浴びるよりも会社にとって打撃は少ないんだ、という判断をしたのだと思います。単純にグッドウィルの判断が賢明じゃないとしか言いようがないですよね。
――グッドウィルやフルキャスト以外の派遣業者を通じて働く派遣労働者もいると思います。そういったところでも「天引き」はあるのでしょうか。また、返還させる交渉を行っているのでしょうか。
これから、次々に日雇い派遣会社のユニオンを作って、不当天引きの返還を求める「闘い」を始めようと思っています。不当天引きは、日雇い派遣業界においてはほとんど全ての会社がやっていました。業界では通例化していたんです。ただ、フルキャストとグッドウィルが大きな問題になったために、ほとんどの会社が不当天引きを5月から7月にかけて一斉に廃止しているんです。でも不当天引きの返還に応じているのは、フルキャストが全額、グッドウィルが2年分だけという状況です。うちにも返還を求めたいという相談が次々寄せられているので、「闘い」はこれからだと思っています。
関根秀一郎(せきねしゅういちろう)プロフィール
派遣ユニオン書記長、グッドウィルユニオン書記長、NPO法人派遣労働ネットワーク事務局次長