経理、総務といった会社の秘密を含む仕事を外注するのは昨今珍しくないが、今度は中国に業務を委託する例が増え始めた。中国に子会社を設立して、日本企業からの受注に乗り出すところもあり、これが一つの潮流になりつつある。日本人でないとできない、と思われた仕事が外注されるのは衝撃的だ。日本企業ではいずれ経理・総務の要員はいらなくなる?
2,500社の日本企業が中国へ委託
こうした社内業務の外部委託は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と呼ばれる。中国でのBPOは、日本企業での人事・総務・経理・営業事務といったオフィス業務を、人件費・設備費が低い中国の拠点で実施する、というもの。コスト削減を図る日本企業にとっては魅力的なサービスで、需要はあるようだ。2007年9月3日に放送されたNHKの「NHKスペシャル」では2,500社の日本企業が中国でのBPOサービスを利用している実態を紹介している。
番組では通販大手のニッセンが人事業務の50%、経理業務の40%を中国のBPO会社にアウトソーシングしたことを紹介している。総務部の業務が、日本語が堪能な中国人スタッフに受け渡されることへの、社員の苦悩振りが描かれている。
ニッセンの片山利雄社長は番組のなかで、
「中国は今や『世界の工場』だけじゃないですよ。事務といった仕事までも海外に行くようになった。そういうローコスト体制とらないと競争に負けると思うんですね」
と話している。
日本IBMが経理業務を請け負う会社を設立
日本IBMも中国への業務委託を進めている。同社は2004年に購買部門66人分の業務を中国の上海に移管。コスト削減に繋がったほか、「業務を集中させて品質を上げるなどの効果があった」(同社広報)という。
さらに同社は自社向けのBPOサービスだけでなく、他の企業向けのBPOサービスの拠点となる「IBM大連センター」を中国・大連に設立した。企業の経理業務を日本語に堪能な中国人スタッフが一括して行うサービスを展開している。
中国でのBPOサービスは、コスト的には国内のアウトソーシングに比べ、少なくとも20~30%程度の削減が見込まれるとされている。あるアウトソーシング業界関係者は、
「短納期・大規模なエントリー業務などは、日本国内では人材の確保が困難になってきているが、中国の人材を活用することで大規模な処理・業務に対応できるのは大きなメリットだ」
と語る。
さらに、
「日本のホワイトカラーの生産性は先進国と比較して低い状況にあるが、業務を分解し最も適した場所で仕事を行うBPOは日本の労働生産性の向上にも貢献していくだろう。BPOサービスに対するニーズは今後もより一層拡大拡大していくと考えている」
一方、数は少ないが、中国の民間企業には日本企業の経理・総務の業務を受け持つ人材を募集しているところも出てきた。今後、経理や総務といった業務が中国の人材でまかなわれるケースが多くなるのは確かだ。