ネットで奪われた読者をネットで取り返す作戦
実際、新聞社の業績は落ち込んでいる。日本新聞協会によると、2006年の日刊紙の発行部数は、ピークだった1997年より約3%減の5231万部。若者層を中心にネットに侵食されている部分が多いとみられ、その傾向は広告費に顕著に現れている。電通が発表した主要媒体別広告費の構成を見ると、インターネットが06年までの10年間で約6%増加したが、その増加分近くを逆に新聞が減らしている。
週刊ダイヤモンドの記事では、収益力があるとされる朝日でも、3年後には新聞事業部門の収支が赤字になりかねない状況だとした。その背景には、広告収入の大幅な減少があるという。それによると、06年度は前年度より約100億円、率にして7.3%減って1300億円程度に落ち込み、ピーク時の3分の2になるという。こうしたことから、朝日は、リストラ策として、赤字の出版部門を08年4月1日に独立させ、子会社の「朝日新聞出版社(仮称)」を設立するという。また、船橋洋一主筆を中心に、高級紙を創刊する構想もあるとしている。
これに対し、朝日新聞の広報担当者は、J-CASTニュースに対し、「新聞業界全体が厳しい状況にあるのは間違いありません。3年後の弊社の収支予測は現時点では困難ですが、『赤字』になるようなことがないように鋭意努力しています」とコメントした。広告収入の数字は公表しておらず、出版部門独立や高級紙創刊の話は、決定事項ではないという。
いずれにせよ、エニーの計画が事実とすれば、ネットで奪われた読者をネットで取り返す作戦と言えそうだ。ヤフーには、脅威にならないのだろうか。同社の広報担当者は、J-CASTニュースに対し、「エニーについては、出来上がったものを見てみないと何とも言えない」と話す。ただ、共同通信社が地方新聞などと共同のポータルサイト「47NEWS」を立ち上げてヤフー配信を止めており、朝日、日経はこれまでヤフーの配信呼びかけに応じていない。それだけに、担当者は、「読売からは配信中止の話は一切ないが、情報提供元があってのサービスだけに、危機感がないといえばウソになる」と打ち明けた。
エニーが実現すれば、ヤフーに匹敵するサイトになるのだろうか。週刊ダイヤモンドでは、「論調の違い」や「ネットの素人集団」と問題点を挙げる一方、3社共同歩調によるインパクトはあるとしている。毎日新聞OBでITに詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さんは
「まず成功しないでしょうね。ヤフーなどで進められている双方向コミュニケーションの重要性を新聞社は理解していないし、やってもうまくいかない。また、ネットオークションなど豊富なコンテンツを持つヤフーと違って、ニュースだけでは収益モデルを作りにくいことなどがあります。むしろ高級紙の方が、今後、可能性がありますね」
と話している。