PFI導入後も赤字が続く背景
同病院をめぐっては、PFI導入後も赤字が続いており、07年度予算でも、約16億7,000円の赤字になる見通し。「PFIを導入すれば即収支改善」とはいかないのが現実のようだ。背景の一端が、医療関係者向けの雑誌「日経メディカル」06年4月号で紹介されている。記事では、医療器具などの材料費が目標を大きく上回ったことを紹介。
「その価格が民間病院と比較してどうなのか、ベンチマークができていない。オリックスが医療を知らないため、契約した企業のマネジメントができなかったということ」
という、医療業界からの「SPCには病院運営のノウハウがない」という非難めいた声と、
「『民』に押しつければ、すぐにすべてがうまくいくと思いこんでいるのではないか」
SPC側の反発の声が紹介されている。
PFI方式で行われた事業がトラブルに巻き込まれた例は、他にもある。
05年7月に仙台市でオープンした複合健康施設「スポパーク松森」では、そのわずか2ヶ月半の8月16日に起こった地震で、屋内プールの天井タイルが9割方落下、負傷者が出るという事故が発生した。「安全対策まで民間に任せでいいのか」との声が挙がった。
PFI方式が裏目に出た例はまだある。PFI方式で02年にオープンしたスポーツクラブ「タラソ福岡」(福岡市東区)は、SPCの代表企業が04年3月に破たん。新SPCに事業が引き継がれるまで、約4ヶ月にわたって施設の閉鎖を余儀なくされた。PFIに対するそもそもの理解不足や、発注者側が民間業者のリスク処理能力を評価できていなかったことなどが指摘された。
そうは言っても、財政難の自治体にとって、大幅コストカットが期待できるPFIを放棄する、という選択肢は選びにくいのも事実。今後も試行錯誤が続きそうだ。