東京大学名誉教授で解剖学者の養老孟司さんが、「たばこの害や副流煙の危険は証明されていない」「禁煙運動家はたばこを取り締まる権力欲に中毒している」などと月刊誌の対談で発言した。これに、日本禁煙学会が激怒。「たばこが害だという根拠が無い、という根拠を示せ」と2007年9月13日に公開質問状を出した。
他人に生き方を押し付けて快感を覚える禁煙運動家?
文藝春秋を巡って、日本禁煙学会は公開質問状を出した
掲載されたのは「文芸春秋」07年10月号。タイトルは「変な国・日本の禁煙原理主義」。養老さんと劇作家の山崎正和さんの対談記事で、なぜ禁煙活動が起こったのか、なぜ健康至上主義になっていったのか、などが論じられている。2人に共通するのは、禁煙や健康至上主義に見え隠れするのが「ファシズム」「ナチズム」であること。養老さんは、禁煙運動家は非常に権力的で、他人に生き方を押し付けて快感を覚えるタイプだ、と痛烈に批判している。
養老さんは、そもそもたばこに害があるなど証明されていないとし、
「『肺がんの原因がたばこである』と医学的に証明されたらノーベル賞ものですよ」
また、「副流煙の危険性は問題外」と言い、
「低温で不完全燃焼するたばこから発生するので有害、というのに科学的根拠は無い」
と論じている。さらに、たばこのパッケージに書かれている「喫煙はあなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」などの文言を決めた一人が大学の後輩だったそうで、
「医者仲間で集まったときに『根拠は何だ』『因果関係は立証されているのか』と彼を問い詰めたらたじたじでしたよ(笑)」
と語っている。
禁煙協会から「質問状」が来ても捨てるだけ
この記事を見て日本禁煙学会は激怒。07年9月13日に養老さん、山崎さん2人に対し公開質問状を出した。そこには、肺がんの主な原因が喫煙でない根拠、受動喫煙には害がないという根拠を示してほしい。また2人はたばこ業界から金銭を得ているかどうか答えてほしい、などが書かれている。
さらに、山崎さんが対談で、「70歳以上の人にアヘンを解禁したら幸せな老人が増えるかもしれない」とか、「中学時代に人目を気にしてたばこを吸っていた」などと発言していることから、中教審の会長としての責任を問題にしている。
公開質問状が出た以上、今後の両者のバトルが気になる。日本禁煙協会はJ-CASTニュースの取材に対し、養老さん達の発言は全くおかしなものであり、仮に海外であんな発言をすればとんでもないことになっているとし、
「疫学を否定しているのに、たばこに害がない根拠を疫学に求めていたりするなど、理論が破綻している。こちらとしては公開討論会を開いてはっきりさせたい」
と怒りが込み上げている様子だった。
一方の養老さんだが、養老さんの事務所に聞いてみると、
「(養老さんは)これまでも、反対される方と戦うとか、反論のコメントを出すということはありませんでしたから、今回もそうなるでしょう。反対するなら、どうぞ『ご勝手に』、ということですね」
と話す。質問状が手元に届いても見ずに捨ててしまうだろう、ということだった。