7月29日の参院選の歴史的大敗から約1カ月半。「続投」に固執した安倍晋三首相は突然辞任した。一国の首相や大統領が辞任すると、株価はどう動くのか。
首相の辞任、セオリーは「下落」
首相が代わると株価はどうなるのか
首相や大統領が辞任は政治的混乱とそれによって招く社会・経済の不安定さから、株価にはマイナス材料となり値下がりするのが、セオリーだ。ところが、安倍首相が突然の辞意を表明した、というニュースが流れた2007年9月12日午後1時ごろには日経平均株価が100円ほど値を上げた。終値では前日比80円マイナスとセオリーどおりに収まったものの、13日には前日比23円59銭高い1万5821円で、小幅だが反発して終わった。
13日は、みずほ、三菱UFJ、三井住友のメガバンク株は売られ、東芝やソニーのハイテク株は軟調だったが、一方で三菱商事や三井物産などの商社株や、住友金属鉱山や新日鉱ホールディングスなどの資源株の多くが上昇した。
楽天証券経済研究所の客員研究員・山崎元氏は「あまりに不人気でどうにもならない首相が退陣することで、『政権が安定することは好ましい』という見方はあり得るかもしれないし、それによって株価が上昇することもないことはないが、そうはいってもニューヨーク市場の1日分の値動きよりも材料としては、遥かに小さい」と、安倍首相辞任の株価への影響はほとんどないとみている。
エース証券の執行役員リサーチ本部副本部長・坪内建氏も、「首相が辞任しても、株価は上がる場合もあるし、下がる場合もあります。一概には言えません。というのは、株価の方向性を決める大きな要因は、経済の方向性が上向きか、下向きかにあるからです」と話す。さらに、日本の株式市場のゆくえを決める一番の要因を「9月18日の米FOMC(連邦公開市場委員会=金利・為替の誘導方針を決める)の動向とそれを含め米国経済がどうなるかにある」とみている。「政治」は5番目の要因だ。
楽天証券の山崎氏は、米国のサブプライム問題が尾を引いているが、「企業の業績を前提とすると、妥当ないし若干割安な水準にまで株価は下がっていて、ここから深く下がることは予想しにくい」という。年末までの株価を「一進一退」とみている。
「麻生銘柄」上昇も一瞬だった
9月12日の東京株式市場は、アニメ-ションやゲームソフトの制作会社、マンガ本の出版社などの銘柄が急上昇。マンガ好きの麻生首相誕生の「前祝」とばかりに、気の早い歓迎ムードがそうさせた。しかし、翌13日はその反動から、東京証券取引所第1部のテクモ、ジャスダックに上場する東映アニメーションやティー・ワイ・オー、日本一ソフトウェアなどの一部を除き軒並み下落。「ローゼン閣下」の神通力も短命だった。
12日にストップ高だったアニメ制作プロダクションのアイジー(ジャスダック)やマンガ古書販売のまんだらけ(東証マザーズ)、マニア向けカードゲームのブロッコリー、オンラインゲームの大手・ガンホーオンライエンターテイメント(ヘラクレス)などの「麻生銘柄」も13日には軒並み下落した。
麻生氏の劣勢が伝えられた14日もアニメ関連株はさえない動きになっている。